注意事項
例によってDVD2巻までしかみていないため、なんちゃってStsです。 設定上、おかしいと思う部分があるかもしれません…… 実際、エリオとかの扱いにちょっと困ってたりします(爆)
小ネタ⑤(実はこっちが本編だったり)
それは儚く小さな火種でした。 僅かな微風にさえ掻き消されてしまいそうな弱々しい火種。
けれど、それは望まれた火種にして確かな輝き……
それを囲う人達に不安を融かす暖かいぬくもりと、立ち上がる勇気の輝き。 だから、その輝きを想う人達全てが集い、強く願いました。
『この尊い火を護りろう』……と。
そうして、そこに集った多くの人達の想いにより、大切に大切に護られながら少しずつ、本当に少しずつ強く育っていく2つの火種。 それは小さな小さな生命の輝きを放つ者達。
たくさんの優しい想いを受け取り、強く輝き始める2つの生命。
1人は金色の髪をピンクのリボンでツインテールにした幼い女の子。 もう1人は栗色の髪を同じようにピンクのリボンでツインテールにした女の子にしか見えない幼い男の子。
女の子の名前は『高町 はるか』、男の子の名前は『高町 はるな』、共に3歳になる双子の男女。 その子達は既に生きる神話と化した伝説の魔導士を祖母に持ち、現在進行形で伝説を作りつつある 只今出世街道爆進中の両親を持った子供達。
父と母達、姉達、そして何より祖母達の過剰過ぎるほどの愛情に育まれ、か弱い身体故に必要以上に過保護に育てられ、少々(以上に?)甘えん坊に育ってしまいつつも……
2人とも、輝かしい今日を元気一杯、精一杯に生きてます。
「「えぐ、えうぅぅぅ……」」
あれ……?
「「ふぅみゅぅぅぅ……」」
……泣き声?
その泣き声が時空管理局開発部主任の地位にある プレシア・テスタロッサの表情を幸福絶頂・至福極楽…… 天から地へと急下降させ瞬時に曇らせる。
彼女を中心に時空が歪みぼやけだす……
小さくとも元気で可愛い双子が自分の勤める部署に飛び込んでくるはずの日常が、爽やかな1日の始まりが最初の一歩から躓くという異常事態。
開いたドアの向こう側にいる ルカ、ルナに何故か全く元気がない。 いつもなら自動ドアが開くと同時にジャンプで飛び込んでくるはずの双子が…… 自分の可愛い可愛い初孫達が、どうしたことか腫れぼったい頬をしたまま俯いている。
彼女自身の目に入れても痛くないほど愛してやまない大切な孫達の、そ異常ともいえる元気の無さに何やら不穏な空気を感じ取り、その身体から陽炎のようにユラユラと金色の魔力が少しずつ漏れ出す。 更に、孫達にバレないようこっそりと時空魔法の構成を編んでいるあたり、既に報復の準備は万端だ。
「ルカちゃん? ルナちゃん?」
自身の内面に吹き荒れるどす黒さを欠片も出すことなく即座に片膝を付き、双子に視線を合わせようとする プレシア。 けれど、それでも未熟児として生まれ、食も細い双子は平均的な3歳児よりも小さく、さらに状態を前方へと その身を屈ませる形になる。
彼女は何一つ言葉を発することなく、ただ優しく見つめ双子の次の行動を待ち続ける。
しばしの間を置き、双子は俯いたまま視線を合わせることなく、躊躇うような仕草を見せながらも、まるであらかじめ決めていたかのように全く同じタイミングでポテポテと歩み寄る。 そして、そのままギュムと大好きな『優しいおばあちゃん』に抱きつき彼女の着る白衣を握りしめて豊満な胸に顔を隠すように埋める。
「「ぅんん……」」
「どうしたの? 何か悲しいことがあったのかしら?
2人とも、そんなお顔していたら、可愛いお顔が台無しよ?」
プレシアが両腕で2人を抱きしめ、落ち着かせようと繊細な壊れ物を扱うように優しく丁寧に その柔らかい髪を梳く。 けれど、その行為が逆に抱きつく双子の力を更に強くし、より密着してくる。
『ぅぅぅ……』と唸るような声を漏らし、双子の小さな肩が小刻みに揺れる。 その優しい言葉が身体をすり抜け、心を震わす。
「「ひっく…… ぅんぅぅ…… ばぁばぁ…… ふぇ…… ふぇぇぇぇん!!」」
両者を隔てていた心の壁が、包み込むような安堵により決壊する。
ポツリ ポツリと降り始めた雨が次第に激しくなっていく。 それはまるで豪雨のように、猛烈な勢いで泣き始める双子の孫の涙を、プレシアは何も言わずに抱きしめ続ける。 まるで豊饒な大地のように広大な母性が、不安を、悲哀を、苦悩を込められた泣き声を受け止める。
激しく泣きじゃくる子供達を優しく抱きしめる プレシア。 それはまるで、聖母の如く神々しさと母性を併せ持っていた
……が
『この表情も…… 良いわ』とか思っていたり、鼻頭から込み上がる鼻血を必死に押さえ込んでいる事実が、どうしようもなく このSSの プレシアが プレシア足る由縁。
生まれ持った『親馬鹿』、『孫馬鹿』という属性はそうそう簡単に消えることは無いのだ……本人も消そう、無くそうなどとは微塵に思っていないし
《……で、これは一体どういうことかしら 駄犬?》
プレシアが抱きしめる孫達に勘づかれないように念話を送る。
『返答次第ではブチ殺す』という本気の殺意が篭もった その念話の送り先にあるのは、双子の異変を察知した瞬間に プレシア主任の発した無言の指示によって、その職員達(ある意味構成員)によって拉致された 子犬モード・アルフの姿!
それはつまり、開発部を統括しているはずの管理局ですら把握されていない秘密の隠し部屋。
一言に秘密基地。 正直に言えば、どう見ても悪の組織。 そのどこぞの秘密結社のように白い十字のベッドに仰向けに磔られている哀れな生贄・アルフ。
……というか、犬の間接は真横に開けるのか?
「ね、ねぇ!! ちょっとぉ!! 何だって アタシはこんな風にされてんのさ!!」
「ふふふ 安心して、アルフ。 貴方は貴重な情報源だから無闇やたらに危害を加えたりなんかしないよ?」
「そうですよ。 今はまだ……ですね?」
「こ、怖ッ!? てッ! そ、そんなんで…… 安心出来るかぁぁぁぁぁーーーーッ!!!!」
全く理解出来ないうちに、四肢を頑丈そうな金属で拘束されながらも必死にもがく アルフ。
唯一動かすことの出来る首を左右に振り回し拘束された四肢を中心に跳ねるように暴れる暴れる。 けれど、拘束具の強度に加え、強力なAMFまで自動発生させる悪の秘密結社顔負けの無駄技術力に全く歯が立たない。
そして、その左右に立つ2つの人影。 それは プレシアと信念を共にする同士にして戦友。 白衣と言う名の戦装束に身を包んだ助手A『アリシア』と、助手B『マリー』。
その2人の助手によって続けざまに掛けられた暖かさを装っただけの冷徹な言葉に、アルフは全身から嫌な汗を滴らせながらも顔を真っ赤に染めて全力全開で言い返す。 否、無理矢理にでも心を奮い立たせ言い返さなければ、再起不能なまでに折れてしまうのだろう…… そのフサフサな子犬尻尾はぴたりと腹部に張り付き、完全に服従、怯えきっている。
支配する者とされる者。 絶対的な強者と無力な弱者。 そこにあるのは天と地ほどの隔たり。
強大な力を以て その場に君臨する プレシアの念話が、アルフの心に浸透し浸食するように発せられる。
《駄犬…… いえ、アルフ 貴方には2つの選択肢が残されているわ……
ルカちゃんと ルナちゃん…… 私の可愛い可愛い可愛い過ぎるくらい可愛い孫達に何が起こったのか素直に話すか…… それとも》
僅かに空いた言葉の隙間に『ごくり……』と、アルフの喉がなり、瞳孔が大きく開く。
《そのとろけ気味で皺の足りていなさそうな脳味噌に直接聞くか……よ?》
プレシアの念話を受け、助手達がゴソゴソと何やら行動を起こす。
「言う…… 言うって!! そもそも最初から話さないなんて言ってないだろ!!
っていうか アリシア、その手に持ったドリル 何!? こっち(マリー)はチェーンソーッ!?」
『キュイィィィィン』と唸りをあげ、ジリジリと少しずつ、少しずつ自分との距離を縮めてくる。
迫り上がってくる恐怖を力に変え、アルフは泣き喚くように叫び、その声は次第に言葉としての意味を失い『ヒィィィーーーッ!』と喉を鳴らすだけの純粋な悲鳴へと変わっていく。
実は最初から プレシア達に相談するつもりで必死に双子達を宥めながらここまで来たのに、あまりに報われない自身の理不尽な運命に…… なんだか理解不能ないろんな涙が止まらずに吹き出し続ける。
「何って…… 歯石でも取ろうかと?」
漢の浪漫が力強く唸りを挙げる
「ドリルでかッ!? それ取るヤツじゃなくて虫歯削るヤツ!! しかもデカ過ぎッ!!」
「ちょっと医学の勉強を……」
医学書っぽい本を片手に手慣れた仕草でエンジンをかけ直す
「解体新書は時代的に古すぎ! しかも、それどう見てもメスじゃない!!」
生命の危機に怯えながらも、必死にツッコミ役をこなす アルフ。
ルカ、ルナの送り迎え役を続け、開発部と接すことにより培った アルフの変人耐性、ツッコミ能力が今、花開く!(本人は全く望んではいないけど)
「……ってか、アンタら不思議メカで ルカ、ルナを24時間体制で警護してるんだから、何があったか知ってるはずじゃないか!!」
『不思議メカ』についての説明
プレシア・テスタロッサの加入によりロストロギア関連の解析が進み、ここ10年で魔導技術は飛躍的に進歩を遂げる。 その結果が開発部の発言力の増大。 そうして追加された予算は試作的に新技術の導入されることになる。
開発部の面々は、その総意により完成したメカのモニタを高町ファミリー(主に孫達)に頼んでいるのだ。
回収されるデータに無意味なほど ルカ、ルナの画像・動画データが多いのはきっと偶然であろう。
……誰も咎めない、咎められないし
《誤解があるようだから言っておくけど、いくら 私達でも…… プライベートまで覗いたりしないわ》
「……へ? そうなのか?」
プレシアが見せた意外なまでの紳士な態度に口をあんぐりとさせ、ありえないモノ、信じられないモノを見付けたように呆然とする アルフ。
《フッ 親として当然じゃない。 でないと、3人目の孫に…… げふげふ、孫達の安全に関わらない部分においてなら、個人の空間は優先されるべきよ》
「ちょっ!? 新たな陰謀の匂いがするよぉぉぉぉーーーーッ!!!!」
恍惚とした プレシアの声が アルフの疑問を一瞬で氷解させ、瞬時に爆散させる。
左右に陣取る アリシアは本当に羨ましそうに手にしたドリルを見つめ、マリーはひどく恍惚とした表情で両手を胸に抱きしめる。 2人ともかなりの美人なはずなのに・・・ その様子はもう、プレシアの弟子に相応しい程、どうみてもマッドな科学者だった。
その後、何とか自我の再構成に成功した アルフから開発部、否、ミッドチルダのアイドル、双天使である ルカ、ルナが落ち込んでいる理由が話されることになる。
一部、妖しげな機械で記憶を覗かれた形跡があるとかないとか…… まあ、何故か理由ははっきりとしていないが アルフの記憶に残っていないため、幸いなことにトラウマになることもないだろう。
アルフの話(記憶?)は昨晩の夕食時まで遡る。
高町家(ミッドチルダ)。
それは地球にある高町家の別邸。 とある高級マンションの1フロア全てを買い取り、壁に穴をブチ空けて部屋同士を繋げるという豪華で豪快な一家の集まり。 実際、なのはと その奥様×7には、それだけの地位や資産があるのだ。(なのは、フェイト、はやて、ヴォルケン組は管理局のエリート。 アリサはミッドと地球との交易ルート開発中、すずかは闇組織の大首領)
今、この高町家の食卓。 真っ白なテーブルクロスに覆われた大きな机をを囲むのは子犬モードの アタシ、アルフを含め、なのは、フェイトと その子供である3歳の ルカ、ルナ。 そして はやて、アリサ、すずかの4歳の娘達である、いぶき、アリス、聖夜。
『家族』である以上、なるべくみんなで食事を取るのが この一家の方針ではあるが、残念ながら それなりの地位にあるが故の責任、どうしても外せない用事というモノも出てくる。
それがこの日で…… よりにもよって、その日に事件は起こる。
「やぁ…… やぁッ! ニンジン、やぁーーーーッ なの!!」
ルカの目の前に対峙する憎き宿敵に対し、その顔を真っ赤に染め、両手両足をばたつかせる。
左右に軽く結わえた感じの ルカの短い金髪ツインテールが照明の光を美しく反射させながらも、その動きに合わせて激しく揺れる。
それは小さな ルカの、全身で力いっぱい拒否、拒絶の意志。 けれど、その目元にうっすらと涙が溜まりつつある今、強大な敵を前に敗北寸前の敵前逃亡なのだろう。
つまりは、駄々っ子モード突入中。
「ルカ…… ちゃんと野菜も食べれるようにしないと丈夫になれないし、ママ達みたいな綺麗で美人さんな大人の女性になれなくなっちゃうんだよ…… それでも ルカは良いのかな?」
なのはから出た『綺麗』『美人』という単語に、その隣に座る フェイトの頬がポッと赤らむ。
それに対し、当の なのはは自身のいつものように膝の上に座る ルカを背中から抱きしめ その頭を優しく撫でる。
本日も なのはの膝上に当然のように座る ルカ。 この食卓にも 小さな ルカ、ルナ用の椅子も しっかりと用意されているのだが、双子は好んでパパとママ、なのはと フェイトの膝上に好んで座る(居ない場合は他のママ達の膝上)。 それは3歳児にしては少しばかり甘えすぎと言えるかもしれない。 けれど、アタシ達の目の前にいる幼い双子の身体は3歳の平均値を大きく下回るほどに小さく、ちょっとした疲労でも熱を出してしまうほど身体が弱いため目を離すのは心配だ。 そして なのは達もまた未熟児として生まれた双子を、入院を理由に生後しばらくは抱きしめてあげられなかったことから、双子のぬくもりを まだまだ感じていたいのだと思う。
(仕方ないか…… なのは、フェイトの膝上に上機嫌で座る ルカ、ルナって、かなり可愛いし絵になるから)
最も、そのことが なのはとママ達…… 更には姉3人に至るまで過保護に、特に姉達が妙に大人びてしまう原因でもあったりするから、アタシ達は ルカ、ルナを中心に団結しているってこと……のかな?
「うぅーー でも、いらにゃいモン!! ばぁばが、だいじょぶ 言ってたもん!!」
抱きしめる なのはのぬくもりを全身に感じ、少しだけ落ち着きを取り戻した ルカではあったが、頬を大きくプックリと膨らませたまま決して引こうとはしない。 そして、その原因となっているのは プレシアさんから贈られた ルカの胸元に輝く緑色に光る宝玉を加工したペンダント。
プレシア主導の元、開発部の総力を結集した最先端の魔導技術に加え、ちょっとばかり過剰防衛になりそうな新技術まで使用された高価なインテリジェンスデバイス。 弟・ルナの持つ赤の『ブラックサン』と対を為す その名は『シャドームーン』。
つまり、ルカは『ニンジン嫌い』を、プレシアから教えられたデバイスの持つ免疫強化、解毒・快復効果で正当化しているのだ。
(なんて口が回る…… いや、賢い3歳児。 これってさ、2人のお婆ちゃんの プレシアや 桃子さん、リンディ達の教育の成果の賜ってこと?)
「ルカ、違うよ…… それは怪我や病気になりにくいっていうことで、大きくなるには ちゃんとバランス良く食べなくちゃ駄目」
隣に座る フェイトが『メッ』と、白く細い人差し指で ルカの額をチョンと軽く小突き窘める。
ちなみに、なのはの膝上に ルカがいるように、フェイトの膝上には ルナがちょこんと座り、スプーン片手に上機嫌でお食事中だ。
ときどき、いや、かなりこまめに フェイトが ルナのモチモチとした白いほっぺに付いた食べカスなんかを拭き取ってあげる仕草が…… 物凄く和む。
(あぁ 小さい子の笑い顔って、凄く和む…… 本当に良いなぁ……)
「うぅ…… でも、嫌いゃもん ……おいちくないもん」
「でもほら、見てみてよ。 私、頑張って料理して見た目も食感もニンジンとは思えないように料理したんだよ?」
声に嗚咽が混じり、本格的に泣きそうな顔を見せる ルカを、なのはが慌ててあやす。
ルカの目の前にある敵(ニンジン)は、なのはの手により その姿形も分からないほど崩され、シチューに入れられている。
騒がしくなりつつあるテーブルの下、湯気の立つ美味しそうなシチューの入ったお皿に アタシは頭を突っ込みながら、正直、ルカが駄々をこねるまで、ニンジンが入っているなんて全然気付かなかったよ。
対して、それに向かい合う席では……
「はぁ ……というか、ルカってば、何でここまで形が変わっているのにニンジンが入ってるって分かったのかしら?」
「そうだよね。 ルカちゃんって粉末近くになるまで微塵切りにしたり、ペースト状にしたりして食感とか青臭さとか…… 全然違うモノにしても、ニンジンが入ってるって気付くんだもんね」
「ルナちゃんの方は、嫌いなニンジン入ってても、あんなに美味しそうに食べているやけどなぁ……
でも、そこまで手の込んだ料理しても材料が分かるってのは、ルカちゃん、料理の才能があるんとちゃう?」
アタシの疑問を代弁するかのように、なのは、フェイトと向かい合うように座る3人娘。 アリス、聖夜、いぶきが話し合う。
普段なら食卓を中心に会話が弾み、家族が1つになっている感じなんだけど、今はちょっと二分されてる感じがする。 まあ3人とも、ルカの泣き顔を見てまで嫌いなモノを薦めたりするのが嫌だから、なのは、フェイトのフォローはしないんだよね…… その気持ちは分からなくもないけど
それでも 実際、どんなに嫌がられても言わなくちゃいけない必要なことだって理解しているから、3人とも なのは、フェイトの邪魔をしたりはしないんだけどね。
「うーん じゃぁ…… 一口だけでも食べてみようか? ほら、ルナの方は嫌いなニンジンも美味しそうに食べてるよ?」
フェイトが少しだけ首を傾げ、考える仕草を取る。
「うん、ママの言うとおりだよね。 それにこのまま好き嫌いが治らないと、ルカはずっと小さいままで大きくなれないよ?」
フェイトがスプーンを手にして湯気の立つシチューの入ったお皿から一口分…… いや、半口分ほど救い、ルカの目の前に持っていく。 その行為を受け、なのはもまた ほっぺを丸く膨らませ不機嫌そうな顔をした ルカの頭をゆっくりと丁寧に撫でながら『じゃあ、私と半ぶっこしようか?』と耳元で優しく囁く。
「……にゃぁ? ルカ、おいちぃーよ?」
「ッ!?」
2人の言葉を受け、ルカの視線が双子の弟、ルナを捉える。
自分と同じ、ニンジン嫌いなはずの ルナが幸せそうな顔をしてシチューを食べている姿に驚き、大きく目を見開く。
自分の嫌いな食べ物を美味しそうに食べる。 それを『裏切り』と感じ取ってしまったのだろうか?
ルカの唇が小さく震えるだし……
「ルナの、ルナの…… ばかぁーーーッ!!」
ガチャッ!!
「「「「あッ!?」」」」
フェイトと、姉達の唖然とした声が響き合う。
癇癪を起こした ルカの小さな白い手が、目の前にあるシチュー(お子さま用にちょっとぬるめ)の入ったお皿を フェイトと、その膝上に居る ルナに向かってひっくり返す。
思いのほか勢いと飛距離を得た それが宙を舞い、いまだ現状を理解出来ないままご機嫌にシチューをつつき続ける ルナと、それを咄嗟に庇おうと身体を割り込ませた フェイトへとぶちまけられる。
バチャ……
「「「「あ…… なのは(パパ)(お父様)(お父さん)」」」」
「ぷはッ ルカ、フェイトちゃん……大丈夫?」
シチューは なのはに直撃した。 しかも、ご丁寧なまでに ひっくり返されたお皿が その頭にのっかっていたりする。
どうやら、なのはが『神速』で2人の間に割り込んだみたいだ……
そして、わざわざシチューの直撃を受けたのは ルカが大丈夫なように膝の上から降ろして自分の座っていた椅子に座らせたため、両手が塞がっていたからだろう。
ポタリ…… ポタリ……
なのはの栗色の髪を伝い、シチューが床へとこぼれ落ちていく。
みんなの視線が なのはを捉え、何も言えぬまま呆然と見つめ続ける。
時間の感覚が麻痺し それが一瞬なのか、それとも数分、もっと長い時間なのか分からない。
「……あぅ? ふぇ…… ふぇぇぇぇぇぇん!!!!」
ルナが笑顔のまま固まり、そして それは少しずつ崩れ、ついには大声をあげて泣き出す。 どうやら、ルカに怒鳴られたことが徐々に浸透していったみたいだ。
その愛らしい顔を真っ赤に染めあげ、小さな手にスプーンを握りしめたまま その幼い身体を震わせ泣きに泣き、全力全開で泣き喚き出す。
「ひっく ひっく えぐぅ…… ままぁー」
「あぁ…… よしよし、大丈夫だから……」
潤んだ瞳で フェイトに抱きつき、更に上目遣いで ルナが愚図る。
プレシアが見たら卒倒するほど殺人的な可愛さを見せる ルナだったけど、そのポロポロとこぼれ落ち続ける涙は頂けない。 それを フェイトも同じように感じたかは分からないけど、その涙を止めようと必死にあやし続ける。
フェイトが優しく ルナの柔らかい栗色の髪を撫で、胸に抱きしめ自身の心音を聞かせ、頬ずりまでして愚図る子供を安心させようとする。 それが功を奏し、ルナは フェイトの胸でグシュグシュと鼻を鳴らしながらも少しずつ落ち着きを取り戻していく。
「……ルカ」
フェイトは ルナを抱きかかえ、頭を撫で背中をさすりながらも隣に座る ルカへと視線を移す。
「……ひぅッ 悪くないもん…… 悪くないもん!! パパのせいだもん!!」
小さな背中が一度、ビクリと震える
「え…… ルカ?」
交差する フェイトと ルナの紅い瞳。 その無言の視線が、なのはと ルナへの謝罪を促す。
けれど、心に負い目を感じているであろう ルカには その視線は重すぎた。
みるみる涙に潤み始める紅い瞳に震える小さな身体。 その幼い心には制御しきれないほど激しい感情が、別の捌け口を求めて破裂する。
シチューを頭から被りながらも心配そうに ルカと フェイトを見つめていた なのはに向かって……
「きらい きらい きらい!! ふわぁぁぁぁぁぁぁん!!」
高ぶる感情のまま勢い良く椅子から飛び降り両手で拳を握りしめ、すぐ側に呆然と立っていた なのはの足をポカポカと殴る。
けれど、それも長くは続かない。 その見た目も打撃音も軽い攻撃でさえも、ルカの息はすぐに上がり肩で激しく上下させる。
既に自分のしていることさえ分からないほどの錯乱し、激しい混乱を見せていた ルカ。 そしてついには、目の前にある全てに耐えきれなくなって逃げ出してしまう……
それは多分、言いたいことが上手く言えない。 伝えたいことが上手く伝わらない。 そのことに苛立ってしまったのだと思う。
「ルカ、待ちなさい!!」
「「ふえぇぇぇぇぇん!!!」」
「えぇ!? ルナまで……」
脱兎……とまではいかなくとも、ルカとしてはかなりの速さでトテトテと食堂から逃げ出す。
フェイトは右手を伸ばし逃げ出す ルカを呼び止めようとするが、双子の片割れ、ルナが ルカの泣き声に併せて再び激しく泣き出す。 どうやら ルカの感情が ルナにまで感染してしまったみたい。
重なり合いながらも離れていく2つの泣き声。 そして、小さくなっていく小さな ルカの背中。
フェイトは胸に抱いた ルナを必死に宥めながらも 隣にいる なのはへと援護を求める視線を送るが……
「き、嫌われた…… 嫌われた? ルナに…… ルナに?」
「えッ! な、なのはまで!?」
なのはが真っ白になっていた……
シチューの残滓を頭から滴らせ両膝と両手を床に付けブツブツと何かを呟く その様子はとても『白い悪魔』に見えない。 まるで打ちひしがれた華奢な美女のソレだ。 しかも何気に絵になっているし
ここに至って、流石に アタシも傍観している訳にはいかない事態に陥っていることを自覚する。
「フェイト! とりあえず、ルナと なのはのことは アタシに任せて…… ルカの方へいってやりなよ!!」
「フェイトママ、お願い、早く行ってあげて!」
「フェイトお母様。 ルカちゃんも心細いはずだから……」
「せや、お父さんと ルナちゃんのことは 私らで何とかするから……」
アタシは『えぐえぐ』と泣き続ける ルナの頭を肉球でポテポテと慰めながら フェイトに言い、その言葉を聞き、硬直していた アリス、聖夜、いぶきの3人娘達も、ルナと…… ついでに、幽鬼のようにフラフラとしている なのはもあやし、落ち着かせようと動き出す。
「う、うん みんな、ありがとう。 ルナのこと少しだけお願いね」
そう言い残し、すぐさま フェイトは、消えていった ルナの背中を求め食堂から飛び出していく。
そして、残された アタシ達もまた、この惨状を何とかするため ルナが落ち着くまで抱きしめ、散らかった食器やブチ撒かれたシチューを片づけ、シチューまみれで魂が抜けたままになっている なのはをタオルで拭いていく。
この後が大変だった……
ルナの方はしばらく落ち着かせれば何とかなりそうだった。 けど、なのはは、娘達に優しく声を掛けて貰いながら身体を拭いて貰っていた時でさえ呆けたままで……
そして、そんな状態の なのはに管理局から緊急の呼び出しがかかったんだ
「……という訳で、昨夜、緊急出撃してからずっと ルカは会えなくて…… なのはと仲直り出来ないままなんだよ」
朝、遅刻ギリギリまで泣きそうな顔をする ルカ、ルナについていた フェイトを想い返しながら話す。 話している間中、なんだか微妙に呂律が回らなかったりしたのは緊張のためであって、決して怪しい薬を使われた訳ではないはずだ……
少なくともそう信じたいよ。
「ああ、だから今日の フェイトは珍しく遅刻寸前のギリギリで朝一の会議来てたんだね」
「緊急出撃って…… テロリストがどっかのお偉いサンを拉致して立てこもったんだっけ? なのはさんの精神状態で大丈夫だったのかな?」
「それは問題無かったみたいだよ。 むしろ予定以上にはかどったとか……」
「憂さ晴らし……なのかな?」
「なのはの実家でやってる御神流って剣術では、対テロリストのノウハウとかも仕込んでいるみたい」
アタシが会話を終え、何故か会話をしただけなのに…… ゼエゼエと息も絶え絶えの、目も涙か疲労で霞まくっている瀕死状態にある中、アリシアと マリーの声が聞こえてくる。
その世間話のような気楽そうな会話内容が…… 世の中ってなんて理不尽なんだろうと痛感させる。 ……助けて ドラえもん<テンパってますね アルフさん
《つまりは アルフ…… 貴方が 私に頼みたいことは、既にテロリストは始末済みだから…… 私の持てる権力とコネを駆使し、こんな理不尽(プレシア視点)な緊急出撃を命令した責任者を社会的…… 更にはスキャンダルをでっち上げて人間的にも再起不能にして欲しいってことね》
突然、アタシの頭の中に直接念話が叩き込まれてくる。
頭に響きわたる プレシアの感情の篭もらない声。 その冷たく伝わっていくショックに脳が揺さぶられ物凄く気持ち悪い。 更には不快感、猛烈な勢いで嘔吐物がこみ上げてくる。
アタシの直感が断言する…… 『この人(プレシア)の言葉はマジだ』と。
「ち、違うからッ!! それ明らかに間違ってるからッ!!」
《あらあら…… だって、私が そんなことされたらショックでおかしくなってしまいそうよ?》
「アンタはそうだろうけどさ!!」
極度の緊張に加え、あまりにも大きな声を出しすぎたために、アタシの頭がクラクラとする。
《呼び出した愚か者の名前は……『シスコン提督』 あら、ブラック?》
「クロノ、逃げてぇぇぇーーーッ!!」
若き英雄、クロノ・ハラオウンに迫りくる家庭崩壊の危機!?
妻子を得、小さな幸せを手に入れた中間管理職(アルフ視点)を襲う醜聞の嵐!?
果たして クロノは家庭円満を護りきることが出来るのか!!
(やる…… 絶対にやる…… この人は、『やる(殺る)』と言ったら全く躊躇しない人だ!?)
《まあ…… 今は制裁よりも ルカちゃん、ルナちゃんが優先よね》
「そ、そぉだねぇー……」
《でも、どうして ルナちゃんまで?》
「それは…… どうも、ルカの感情に引っ張られているみたい」
プレシアの言葉に、風向きが変わったことを感じ取り安堵する。
クロノ提督の安らかに見える日常は護られた…… とりあえず、一時的には
双子と なのはとの仲直りがすんでからの クロノの不幸には敢えて目を瞑り、無理矢理、念入りに記憶から消去した上で、アタシは プレシアに細かい説明をする。
まあ、ルカの方がお姉ちゃんぶっている分、ルナは ルカの感情に引っ張られやすいんだよね。 しかも、ルナは ルカ以上に甘えん坊だから……
そんなこんなで アタシはようやく プレシアの発するプレッシャーから解放されて……
多分、殺意の8割以上が クロノに向かっているおかげで アタシはちょっと楽? ……とか思ったりと
クロノ惨殺の予知夢やら、走馬燈見たいなモノが脳裏に走りながら、極度の緊張から解放された アタシの意識は急速に落ちていった……
そして場面は ルカ、ルナを抱きしめる プレシアへと戻る
「ぅぅ…… 朝、おきちゃら えぐ ぱぱ いないおー」
「えぅ 朝も…… ぐしゅ いってらっちゃいのチューも ないのー」
「きらい 言ったから…… ルカ、嫌われちゃったお……」
「「ふぇ…… ひっく…… ひっぐ……」」
プレシアの胸元に顔を埋めながら、ルカ、ルナが嗚咽をあげながら捨てられそうな子犬のような瞳で訴えてくる。 その上、彼女らと開発部職員達とお揃いのデザインがされた2人の管理局員っぽい洋服に皺が走り、涙が止めどなく落ちる。
もし後日、双子の着る この制服っぽい洋服が、管理局内へのフリーパスを名目に、ペアルックを企む開発部及び、ファンクラブ職員達の総意によってなされたモノだと知ったらどう思うだろう?
特に ルナのはどうみても ルカと同じ女性用職員のモノだし……
「大丈夫よ2人とも…… なのはちゃんが、貴方達を嫌いになんてならないわ」
プレシアが ルカ、ルナの耳元に春風のように優しく暖かく、そっと囁く。
「「ぐしゅ…… ほんろに?」」
「『絶対』に……よ。 だから、私と一緒に なのはちゃんに謝りに行きましょう?」
こみ上げる熱い血潮(主に鼻血)を必死に堪えながら、備え付けのビデオを遠隔操作し記録作業に余念がない プレシア。
アルフへの念話という平行動作までも行いながらも、優しげな笑顔で双子をあやす その姿は才能の盛大な無駄使いを感じさせつつ、確実に孫達の機嫌を快復させていく。
「「ばぁばも……いっちょ? うん ……行く。 ぱぱに謝るよぅ」」
ルカ、ルナの小さな手が涙に濡れるほっぺを拭う。
瞳を溢れる涙に潤ませながら、ようやく進むべき道を見つけた双子は漏れそうになる嗚咽を必死に抑える。 そんな健気さを見せる双子に プレシアは優しく微笑み、誉めるようにゆっくりと その金色と栗色の髪の毛を撫でる。
「ええ、一緒に謝りにいきましょう」
「「……うん」」
右手に ルカ、左手に ルナ。 プレシアの両手が双子の手を取り仲良く部屋を出ていく。 その目指す場所は当然 なのはのいる場所。
2人の幼子の涙を止めるため、その尊い笑顔を護るため…… プレシア・テスタロッサ始動!
……あれ、仕事は?(既に暗黙の了解です)
古代遺物管理部機動六課。 それは第一級捜索指定ロストロギアに当たるレリック問題専門の部隊という名目で新たに設立されたオーバーSクラスの隊長3名を擁する精鋭部隊。
その本部宿舎のあたるミッドチルダ中央区画湾岸地区。
ここに、ルカ、ルナの求めるパパ。 『高町 なのは』の姿があった。
細い身体を包む白いバリアジャケット(何故かミニスカ)に加え、腰まで届く栗色のツインテールのどうみても妙齢の女性にしか見えない人物。 それが なのはだった。
地面に直に片膝を立てて座り、10年という長い付き合いのデバイス、レイジングハートを肩に担ぐ その姿はまるで彫像のような1つの完成された芸術品と言え、その憂鬱な表情で真っ青な空を見つめ、時折溜息をつく その仕草が さらに『美』の完成度を高めている。
そして、そこから少しだけ離れた所に、寝転がる少女が2名。
「ねぇ ティア……」
「……なによ スバル」
「空、綺麗だよね」
「……そうねぇ」
なのはを隊長とする起動六課スターズ分隊所属の『スバル・ナカジマ』と『ティアナ・ランカスター』だった。
彼女らは共に大の字で寝転がり、大地の冷たさを、心地よい風の流れを、そして広く青い空とを充分に満喫していた。
「あっ! ほら、あそこ…… あんなにはっきりと虹が架かってるよ」
「……雨、降ったからね」
スバルが腕一本、指先一つ動かすことなく、視線のみで大空に架かった美しい虹の存在を示唆する。 けれど、ティアは その存在に心も、視線さえ動かされることなく酷く不機嫌な様子で渋々と相づちを打つ。 遙か上空に広がる上天気とはまるで正反対の ティアの内面に、スバルは そのままの姿勢で思わず苦笑する。
「うん、降ってたよね。 訓練後のシャワーにしては少し冷たかったし、ちょっぴり生傷に滲みたよね」
「……そ、そうねぇ」
雨上がりの空に架かった虹。 少し前まで降り続いていた にわか雨を思いだしプルプルと無意識のうちに スバルの身体が震える。 それは全身に刻まれたジワジワと痛みを訴え続ける生傷だけのせいではない。
流石に、地面は雨で湿り、髪の毛が肌に張り付き、更に下着まで雨に濡れていては不快感を感じずにはいられないのだろう。 ちなみに なのはの方はレイジングハートが気を利かせてプロテクションの傘を張っていたため全く濡れていなかったりする。 そのことが尚更、しっけた自身を認識され…… ティアの気分は大空と同じブルーになる。
「なのはさん…… 強かったよね」
「…………」
管理局を代表するエースオブエースを『強い』と称する スバル。
当然の、周知の事実であるはずの それに、何故か咎めるような色が篭もっている。 その言葉を聞いた ティアは その事実に対して何も言えず口ごもる。
「今日は夜勤明けで少し疲れていたみたいだから、今日こそ1本取れると思ったんだけど……」
「……わ、悪かったわよ!!」
スバルの天然なのか、故意なのか、よく分からない言葉の数々に少しずつ追い込まれていく ティア。 ついに我慢出来ずに逆ギレ気味に白旗を挙げる。 その突然の大声に全身が苦痛の悲鳴をあげ、ちょっとだけ ティアの目尻に涙が浮かぶ。
「ティア?」
ティアの大声に スバルは目を丸くし、その後に耳に入ってくる小さな悲鳴に危機感を感じ、疲労と傷に痛む身体をギリギリと無理矢理動かし、自分の相棒、ティアの様子を確認しようとする。
「そうよ!! たしかに 私が、今の なのはさんのコンディションなら1本位…… 一撃入れる位は出来るんじゃないかって言ったわよ!!」
言葉による速射で誤魔化しにかかる ティア。 身体的苦痛よりも精神的苦痛の回避を最優先したらしい。
「うん、なのはさん いつも『油断している方が悪いんだよ』って言ってるしね ……でも 私達、雨に打たれても大の字で動く余裕すらないよ?
……普通なら、なんとか歩ける程度には動けるのにね」
こっち(スバル)はボコボコにされながらも『なのはさんって凄い』と頬を赤らめ傾倒中……
「だって!! 手加減されるよりも無意識の方が遙かに強いだなんて…… どんだけ達人なのよ あの人は!!」
「いつもは絶妙に手加減されてみたい。 生かさす殺さずってヤツ?
……あ、デバイスもボロボロ、シャーリーさんに修理してもらわなきゃ」
自分達から申し出た なのはとの模擬戦で完膚無きまでにボロボロにされ、いまだに一歩も動けない2名の少女の姿が そこにあった。
それは夜勤明け、しかも何故か目元に隈まで浮かび疲労困憊の『なのはさん』。 この状態ならば、今の自分達でも良い勝負が出来るのではないかと思い、望んだ一戦。
請われるまま半ば無意識に戦いに望み、棒立ちで力無く垂れ下がる なのはの両腕。 そんな状況にも関わらず2人は、油断することなく最速、最大の攻撃を最高のコンビネーションで打ち込んだ。
けれど、現実は、エースオブエース、白い悪魔はそんなにも甘いモノではなかった……
予備動作さえ消した無駄のない攻撃。 読めない攻撃の軌道。 バリアジャケットを徹し貫いてくる容赦のない必殺の一撃。
表情1つ変えない その攻撃は2人にほとんど何もさせないまま確実に戦力を削いでいく。 そして、数秒後には大地に見事なまでに無力化され、無様に沈む2人の姿があった。 それは予測の甘さ故、ある意味当然の事態だった。
その結果として作り出された この状況…… 普段ならば、介抱してくれるはずの隊長は、自分達から少しばかり離れた場所で立てた片膝にもたれ掛かるように座りこみ、完全に気が抜けた状態でブツブツと呟いていて…… 怖すぎて声も掛けられない。
「「ぱぱぁぁぁーーーーッ!!!」」
にも関わらず、この青空に響きわたるほど大きな声で『なのは』を呼ぶ声が聞こえてくる……
果たして、この幼げで不安と憂いを含んだ2つの声は スバル、ティアの2人にとっても救いの声となるのだろうか?
「……ッ!? ルカ!! ルナ!!」
《Sonic Move》
その声に弾かれたように顔をあげ……
なのはの瞳が愛する2人の幼子の姿を映し出す。 その距離、約200M。
それはまるで幼子達の声に導かれるよう、高速移動の魔法に加え、更には神速まで使用して 彼我の距離を詰めにかかる なのは。
ゴォォォォォーーーーーッ!!!!!
最速、最短で真っ直ぐに迷い無く突っ切る なのは
物凄い轟音を立て、放出する魔力は大地さえも削り、容赦なく大きな傷をつけていく。
そして、なのはと双子達に挟まれるような位置に大の字になっている スバル、ティアは……
「「ヒィヤァァァァァァーーーーッ!?」」
当然のように巻き込まれる。
「で、でも、こんな容赦のない なのはさんも素敵ィィィィィーーーーッ!!」
「ア、アンタねぇ!! そのデレっぷりはちょっと異常よ!!」
暴走特急なのはの直撃こそは受けなかったものの……
その荒れ狂う嵐に巻き込まれ、人の身体がまるで木の葉のように舞い上がる。 そして、そのままクルクルと回転しつつ、ポチャンと海へと突入。
怪我と疲労で動かない身体でのダイブ。 それはもしかしたら微妙に生命の危機だろうか?
……十中八九、六課の一員だから大丈夫だろうと判断されそうではある。
されど、スバル、ティアを吹き飛ばしたという意識さえ無い なのは
既に認識出来るのは ルカ、ルナの溢れそうな涙に決壊寸前の顔のみ
「ルカ! ルナ!」
「「ぱぱぁーーーッ!!」」
なのはは精妙な魔力制御で加速と減速を行い、愛する我が子達である双子に全く悪影響を与えることなく、その直前にピタリと静止する。
そのまま互いに涙を浮かべ、ガッシと抱きしめ会う親子3人。
なのはは両腕で ルカ、ルナをまるごと包み込み、苦痛を感じさせない強さで強く胸に抱きしめる。 白いバリアジャケットの上着を握りしめながら胸に顔を埋める双子から溢れ落ちる涙が、なのはの胸もとを濡らしていく。
なのはに抱きしめられ、宙に浮いた ルカ、ルナの足先がパタパタと揺れ続けている
「……ごめんちゃい」「ぉめんちゃい!」
「きらい うしょ(嘘)らお!! ……ほんろ(本当) 好きなの!!」
「ぱぱぁ…… ルカと ルナ、きりゃい(嫌い)ににゃらないでぉ」
「ルカ、頑張るきゃら…… ぐしゅ、たべりゅ(食べる)の頑張るきゃら…… えぐッ きりゃい(嫌い)になっちゃ…… やぁーッ!!」
しばしの抱擁後、突然 ルカ、ルナは涙に滲む、赤く泣きはらした顔をガバリと上げ なのはを見つめる。 そして、双子特有の、謀ったかのようなタイミングで同時に謝り…… なのはの首筋にへと3歳児の持てる力全てを使い、強く抱きついてくる。
嗚咽混じりに『嫌いにならないで』と繰り返し縋り付く双子の姿が健気で可愛らしく…… けれど、それ以上に痛々しい。
「泣かないで…… 大丈夫だよ。 嫌ったりするはずない…… 私も ルカ、ルナが大大大好きだよ」
「「ぐしゅ ……ほんろ?」」
『大・大・大好き』という言葉と、親としての愛情を込めた精一杯の微笑み。
その言葉と行為と共に なのはが片膝をついて屈み、双子の足を大地へと落ち着かせる。 その上で嗚咽を繰り返す2つの小さな背中を優しくさすり、ルカ、ルナの頭をポンポンと触れるように軽く叩き、撫でる。
潤んだ紅と碧の2対の瞳。 涙の跡の残る晴れッぼったいほっぺ。 なのはの服を握りしめながらも震える全身。 そして、抑えきれない不安を嗚咽としながら、こみ上げてくる幼さ故に理解不能な恐怖に怯える ルカ、ルナ。
幼い ルカ、ルナは なのはを求める。
言葉ではない。 暖かい何かを……
「私が2人に嘘を言ったことがあるのかな?」
「……ないお」「……にゃいお」
なのはの体温を、子供特有の高い体温を、互いのぬくもりを見失わないように決して離さない。
真面目で真摯な…… 見る者全てが見惚れてしまうような凛々しい表情で なのはは ルカ、ルナを見つめる。 目と目を合わせ、言葉だけじゃない何かを伝えたいと願う。
幼くあどけない2対の瞳が、なのはへと魅せられ惹き付けられていく。
「うん、そうだよね。
だからそんなに泣かないで…… 2人は笑って欲しいな。 だって、ルカと ルナの笑顔を見ると 私はとっても元気になるんだよ」
なのはの指先が、ルカ、ルナの目尻に溜まった涙の雫を拭いさる。
「えへへ……」「にゃう……」
「やっと…… 笑ってくれたね」
ルカ、ルナの不安を残した表情が崩れ落ち、恥ずかしげに、照れたように微笑む。 その、いまだに涙に濡れた幼い微笑みが なのはの本当の微笑みも誘う。 それは心から沸き上がってくる幸せが形作った表情、心と心が繋がり合った喜び。
なのはと ルカの心がすれ違って約14時間余り……
長い、本当に長い(なのは私感で)葛藤を経て、ついに、ようやく和解へと至る。
「ミッション・コンプリート」
プレシアが呟く…… 当然、手にしているのは『REC』の赤ランプが点灯するビデオカメラ。
日々進歩を続ける最新機器が、抱擁し、額やらほっぺたやらにチュッチュとキスしあう親子の微笑ましい光景を、その至高の時を余すとこなく鮮明に捉える。
予備のビデオ、バッテリーともに充分、強力な応援も要請済み(ファンクラブ及び、あの人とか あの人)…… 更には、既に独断で この後の なのは、フェイトに有給をぶんどり家族の時間もキープ。
出来る女 プレシア・テスタロッサの本領発揮である。
それが自身の趣味にのみ200%以上の力が注ぎ込まれるのが著しく問題ではあるけど……
そうして、なのは・親ばか伝説に新たな1ページが加えられる
そんでもって海上
プカプカと浮かんだ人型の影が2つ
今回、いまいち扱いが悪かったお二人
「ねぇ、ティア 私達…… 初出から、あんまり扱い良くないよね」
「それは このSS書いてるヤツが、まだDVD2巻までしか見ていないからよ……」
「DVD3巻は発売日当日に買ったみたいだけど…… これ書いてから見るのかな?」
「全く!! とっととDVD見て、もっと 私達の活躍も書きなさいよ!!」
「……あのさ、ティア? 3巻の8話で白い悪魔様降臨で ティア半殺しじゃなかったっけ?」
「で、出番を取るか…… 平穏をとる……か?」
これを投稿したら襟を正して3巻を見させて頂きます…… はい
【せってー】<今回登場した子供達が全員オリキャラなので、整理の意味も込めて紹介
『高町 はるか』(愛称は『ルカ』)
なのは×フェイトの娘で現在3歳。 未熟児として生まれ、1年近く入院していたため平均的な3歳児よりもだいぶ小さく、食も細い。
性格は活発だけど甘えん坊で少々我が儘。 容姿はミニ・フェイト…… というより、性格的なものも考えれば、むしろミニ・アリシア。
『高町 はるな』(愛称は『ルナ』)
なのは×フェイトの息子で現在3歳。 僅かな時間差で一応は ルカの弟になる。
生まれから入退院までの経緯は ルカと同様のため、やっぱり身体が小さく、小食。
性格は引っ込み思案で ルカ以上に甘えん坊。 末っ子の立場にいて、更に周りも過保護なため、かなりの泣き虫になってしまったけれど優しい子。 容姿はミニ・なのは…… 性別まで自分と同じにならなくても良いのに…… と、なのはを嘆かせるほどそっくり。
『ブラックサン』『シャドームーン』<ルナ、ルカのデバイス
祖母プレシアにより開発、制作された赤と緑の宝玉をペンダントに加工した2つのインテリジェンスデバイス。 材質やら、技術やら…… 色々と最高級・最先端のモノが使用され、滅茶苦茶高価なモノに仕上がってしまったデバイスである。
常に持ち主の体調をチェックし、蓄積された魔力により自動ヒーリングやオートプロテクション。 免疫関係の強化等を行う。 この機能により、強すぎる魔力から幼い双子を護り、また弱く小さな身体に活力を与えている。
デバイス、及びバリアジャケット展開時は、両親に対する潜在的な憧れがあるためか、ルナは なのはに、ルカは フェイトに そっくりなデバイスとジャケットを展開する……予定。
その違いは ルナが黒を基調、ルカが白を基調としているためイメージとしては黒なのは、白フェイト。
更にバリアジャケットには プレシア補正が掛かっているため、通常のバリアジャケットの上に白(ルカ用)と黒(ルナ用)ゴスロリドレスを展開し、過負荷な魔力放出量抑制による攻撃力の低下(それでもAクラス近い力があったりする)、及び重量増による速力低下と引き替えに、鉄壁と言える防御力を得ている。
『高町 聖夜』
なのは×すずかの娘。 一応12月25日生まれの4歳児ってことで……(あ、双子の方は決めてないや)
性格はおしとやかで、4歳児とは思えない大人っぷり。 容姿はやっぱりミニ・すずか。
妹弟が絡むと母親から受け継いだ夜の一族の力を躊躇い無く駆使するほどブラック化するけど、基本は落ち着いたお姉さん1号。
『高町 いぶき』
なのは×はやての娘。 新年、1月2日生まれの4歳児。
性格は明るく朗らか。 母親から受け継いだ関西弁を駆使する やっぱり容姿はミニ・はやて。
妹弟には劣るが、両親の魔法資質をしっかりと受け継いだ魔法幼女なお姉さん2号。 やっぱり妹弟が絡むとにこやかにブラック化する謀略家。
『高町 アリス』
なのは×アリサの娘。 1月5日生まれの4歳児。
性格は勝ち気で積極的、負けず嫌い。 母親譲りの賢さを持つ、3人娘で一番下ながら、他の2人を引っ張る役割のミニ・アリサな幼女。
一応魔法資質有り、最近、御神流を習い始めた魔法剣士なお姉さん3号で妹弟にはデレデレ……
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