小ネタ⑥

注意事項
 本作は「館長」さんの「創作天文台」にて掲載中の「魔法少年ロジカルなのは」のパロディ(三次創作)です。
 館長さんや原作者様から、怒られたら……多分、すぐに更地になります。
 本作は「魔法少年ロジカルなのは6-4」からの強制分岐です。
 なお、桃子さんが理不尽なまでに最強で、プレシアさんは原作、及びロジカルとは逆方向に壊れております。
 以上の事に注意して、納得した上で読んで下さると嬉しいです。

 小ネタ⑥

 雪やこんこん 霰やこんこん
 降っては 降っては ずんずん積もる
 山も野原も 綿帽子かぶり
 枯れ木残らず 花が咲く

 アタシはここに来て初めて教えて貰ったばかりのお気に入りで、ピッカピカな歌を小躍りしながら上機嫌に歌う機嫌良く跳ねる。 それは一面の銀世界。
 季節は一月。 新たな年を迎えたばかりで、山の木々も空の色さえも まだまだ寂しい自然の風景。 だけど、年末から年を超えて降り続いた粉雪は そんな寂しさを覆い尽くして一面を神秘的な白さで包み込んでしまう。
 この『雪』というものを アタシは知らない。
 生まれて初めて見る その綺麗な光景に魅入られ、全身に吹き付ける冬の寒さも忘れて居候中である高町家の庭を駆け回る。
 内心手狭…… それでもこの世界における一般家庭の平均を超える広さだけど、そんな不満さえあっさりと吹き飛ばす。
 フェイトの家…… 正確には あのババァの…… いや違、その母親所有の庭園や親友である アリサ、すずかの住む豪邸に見合うような敷地に比べれば全然小さ…… 家庭的な庭だけど、今の アタシの躍動し続ける心には何も関係ないことだ。

 シャッ シャッ シャッ

 サクサクと四肢を呑み込んでいく冷たい感触が興奮に火照った心と身体に心地よい。
 踏み込むたびに四肢が真っ白いキャンパスに彩りを加えていく。 その積もったばかりの新雪を踏みしめる音が、その感触がなんとも堪らない。
 説明しようのない楽しさを抑えきれずに顔が綻んでいるのを自覚し先程からノリノリな鼻歌が止まることはない。

 雪やこんこん 霰やこんこん
 降っても降っても まだ降りやまぬ
 犬(アタシ)は喜び 庭駆けまわり
 ユーノが…… 棺で固くなる?

 ……あれ?

 最後、ちょっと違ってるかい?

 重箱の片隅に某シスコン提督の発動させたエターナルコフィンでカチコチになった変態イタチもどきが脳裏に浮かんだりしたけどさ…… それはきっと遠くない未来の予知夢に違いないと思えて仕方がないね。

 まあ良いかッ! アタシにはあんまし関係ない話だしね

 特に あの淫獣の協力(強制)によって得られた情報が、あの聖夜に起こった『闇の書』問題を解決した今となっては害悪だけが残って敷き詰められたような存在で……
 『必要ない』と即断で切り捨てる。

 無限書庫から得られた情報だけには感謝してるけどさ……

 そんな淫獣のことよりも 今は

「アルフ…… ど、どうかな?」

 極一般的で家庭的な庭を持つ日本家屋。 それまでビシッと締め切られ外と同じ真っ白なカーテンまで引かれていた窓が少しだけ開き、そこから アタシを呼ぶ声が聞こえてくる。
 小さくて照れたような、でも嬉しさと喜びがこぼれ落ちそうな女の子の声を アタシの聴力がはっきりと聞き取る。
 間違えるはずがない。 よく聞き慣れた この声の主は当然 アタシの主、フェイトのモノだ。

 振り返る

「へぇ……」

 驚き、そのまま魅了され呆然としてしまう。
 見つめる視線が一点に集ったまま その動きを止める。
 それはほんのわずかな瞬間。 アタシの心全てを釘付けにする フェイトの晴れ着姿。
 今日この日、これから出かける初詣のために整えられた それは、冷たい冬を越え訪れる春を想像させる若草色を基調とし、その新緑にひっそりと、でも確実に その存在を主張するようにあしらわれるのは桃色に煌めく桜の花びら。
 慣れない格好に加えて緊張に頬を赤く染める その様子に、いつもと違う フェイトを見いだして思わずジロジロと見つめてしまう。

「へ、変じゃない……かな?」

 窓を挟んだ庭と部屋。 その境界を超えるように伝わってくる フェイトの声と表情に不安の色が浮かぶ
 アタシの使い魔としてリンクする回線からも不安の感情が伝わってくる
 そこでようやく アタシは何も言葉に変えていないことに気付く
 伝えることさえ忘れ、大切な気持ちを言葉にしていないことに思い至る

 はッ!? 不味いよ! フェイトが不安に感じてる!? ついつい見とれてたよッ!!

「似合ってる! 全然変なんかじゃないよ!! その格好……ハレギ? キモノ? フェイトに とっても似合ってるよ!!」
「……本当?」

 必死の弁明……
 けれど フェイトの表情は晴れてくれない
 どうも自分の格好にいまいち自信が持てないみたいだね?
 不味い…… 美辞麗句ってやつがとんと出てこないよ…… 悲しいくらいに語呂が乏しい
 アタシはこういったのは苦手だよぅ

「そうだよ!! アリサ達…… いや、シグナム、シャマルにも負けないくらい大人っぽい美人さ!!」
「そ、そぅかな?」

 ほっぺをほんのり桜色に染まり フェイトの機嫌が良くなるのが分かる
 もう、ちょっと自棄っぱち
 でも そんなの関係ねぇッ
 きっと十年後には あの二人に負けないくらい、ぐらまーな美人になるさ!
 プレシアの遺伝子継いでるからスタイルは問題無し!!
 だけど性格だけは遺伝してない……よね?

「そうだよ!! これなら絶対 なのはだって……」

 そこでハタと気付く
 それと同時に言葉が詰まる

「……あれ、なのはは?
 たしか、プレシアのやつが その晴れ着をクリスマスプレゼントとして フェイトのとお揃いで贈ってきてたんだよね?」
「なのはは……」

 アタシは唐突に脳裏に走った疑念に縋り、ちょいと気まずい場の雰囲気を濁しにかかる
 ふぅ…… どうやら それは功をそうしたみたいだね
 フェイトは形容しがたい視線を部屋の奥へと向け、ここから回想シーンへと入っていく

『お母さん、これって女の子用だよ…… 間違っているんだよね?』
『な、なんで…… なんでそんなにも素敵な笑顔のまま無言なの? ねぇ…… お母さん?』
『……なのは?
 この晴れ着はね。 フェイトちゃんのお母さん、プレシアが この国の『初詣』という行事を知って(調べて)わざわざ贈ってきてくれたモノなのよ』
『わ、分かってるけど…… これどう見ても女の子モノだし……
 ほら、きっと何かの手違い? で…… だから『問題無いわよん』……お母さん』
『この着物にはね…… プレシアの暖かい真心が篭もっているの』
『『真心』って……真っ直ぐな気持ち? 本音か本心?
 そこにどんな『気持ち』が篭もっているのか小一時間くらいは話し合いたい気持ちだけど……』
『誰かから受けた恩を仇で返しては駄目……
 人の優しさを一方的に否定するような人になっては駄目……
 思いやりに泥を掛けるようなことをしては駄目……
 なのはなら分かっているわよね?』

 ギリギリギリギリ

『わ、分かってる(砕ける)! 分かってる(砕ける)からッ!! そんなに強く肩を抱きしめないでよ!!』
『あら ごめんなさい』
『ふぅ…… これ、痣になってるかも『つまり、この場合は着ることこそが最大の感謝!! 最高の返礼!!』……はにゃ?』
『フェイトちゃん共々……既に撮影会の準備は万端よ』
『へ、へぇ……』
『さて、なのはの理解も得られたところで…… お着替えタイムね!』
『あぅ 私に選択権が無いことだけは理解出来たよ……』

「……っていうことがあったんだ」
 軽い溜息と共に言葉を吐き出し フェイトが二人のやり取りを締めくくる。

 以上、回想終わり

「なんか アタシ……」
 清流のような清々しい何かが胸を満たしていく
「今まで なのはに騙されたこととか、ボコボコに殴り飛ばされたことを含めて、過去のいざこいの全てが、優しい気持ちで許せるような気がするよ」

 ソファーでぐったりと伸びているだろう なのは(晴れ着着用済み)が用意に想像出来て憐れみ…… いや、かなり寛容な心がグリグリと迫り上がってくる
 胸の支えが清々しく…… いや、かつてのいざかいで芽生えたドス黒く、でっかい憎しみは跡形もなく絶え、今の アタシの心は湖面の如く静かで穏やかだ

「なのはは最近の母さんのお気に入りだから……」

 ああ、それは同意だね
 でも、そのおかげで フェイトへの(過度な)愛情表現が半分位になったのは本当にありがたいけどさ

「それを言うなら フェイトに対しても相当なモンだったと思うけど……
 まあ、なのはや 桃子のおかげで アタシ達の被害が減ったのだけは真実だからねぇ」

 うん、なのはの母親、『桃子さん』という親友……ここでは信念を共にする同士?を得、なのはと、そして未来に誕生する(ことを熱望している)であろう孫達へと、プレシアの愛情パワーが分散してくれたおかげでどれだけ助かっていることか……
 まったく、感謝してもしきれない位だよ
 もっとも、愛情の対象が増えたことで元からあった愛情パワーが増大しつつあるのは末恐ろしいけど……
 それでも プレシアの身体は一つだけだからッ!!
 一人にしておくと何かえげつないこととか計画しそうだしさッ!!

 怒濤の如くこみ上げてくる憤りを、無力さゆえに変えられない理不尽に対し、その想いのまま青空に向かいワォワォと吠える アタシ
 フェイトの不思議そうな視線をひしひしと背中に感じ取るがどうしてもやめられないんだ

 虚空に向かってワォワォ吠え続ける アタシと それをオロオロと見つめる フェイト
 なんだか硬直しつつある事態
 だけど それは一人の住人によって容易に崩れることになるんだ

「あッ フェイトちゃん、着物に着替えたんだ~」

 それは若い女性の声
 なのは違うよ?
 桃子さんは そこまで若くは…… いや、なんでもないなんでもない。 命は大事な宝物!

「美由希さん?」

 そう、高町家の長女
 いつもの眼鏡に フェイト、なのはと似たようなキモノ……というかその格好が巷で噂の巫女さんってやつかい?
 そういえば年末年始は知り合いのお手伝いをするって言ってたっけ?

「わッ かわぁいいぃぃーーーッ!!」
 キュッ キュキュゥゥゥゥーーーーッ
「み、みゆきさん…… あの、そのぅ……」

 それは形容しがたい効果音を放つ熱烈で熱烈な抱擁
 フェイトが目を白黒させながら アタシに『どうしよう?』の視線を向けてくるけど……

 ごめん、アタシには無理だよ?

「ほっぺもすべすべ…… 髪の毛もふわふわで気もちぃ」
「えと、そんなことは…… それに、それは着物の感想じゃないような……」

 これってスキンシップ……だよねぇ?
 恍惚の表情で頬ずりする 美由希の目が少しばかり充血して血走っているように見えるのは気のせい……だよね?

「はっはっは まったく! 俺の未来の娘は可愛いな!!」

 えぇ……と
 高町家長女に続き、高町パパ登場?
 いや、腰に両手を当てて無駄にふんぞり返えられても……
 この親父、フェイトが晴れ着に着替えている間はずっと外へと閉め出されて道場にいたはずなのに、しかも着替えが終わったのも伝えられていないはずなのに、いったい何時の間に戻ってきたんだろ?

「し、士郎さん……」
「ほら、フェイトちゃん。 士郎とーさんも似合っているって」
「はぅ……」

(悪意はないんだろうけど……
 完全におもちゃにされてるよ)

 抱きしめる 美由希が 士郎パパの言葉に乗り、ニッコリと微笑む。
 そのダブル攻撃に フェイトが頬を真っ赤に染め、身体全体で『照れる』という言葉を表現する。
 フェイトって『父親』の記憶が無いから、こういう展開にあんまり免疫がないんだよねぇ…… まあ、慣れだと思うけどさ。

「フェイトちゃん! なんなら今から『お義父さん』と呼ぶ練習をしてくれても構わないよ!
 ……女の子なら 桃子が翠屋の後継者候補に、男の子なら俺が未来のプロサッカー選手に……」
「士郎とーさん…… 後半から妄想がダダ漏れだよ?
 ……でも、私も 美由希お義姉ちゃんって呼ばれたいかも」

 浸ってる 浸ってるよ……
 この父娘、どっぷりと妄想に浸っている

 そしてSOS信号(念話)受信

《アルフ…… どうしよう?》
《どうしよったって…… これはもう、一種の病気かい?》
《私…… 士郎義父さん、美由希義姉さんって呼んだ方が良いのかな?》
《フェイトが そう呼んでも、呼ばなくても現状は変わらないと思うけどねぇ……
 むしろ悪化?》
《そ、そんな…… じゃあ 私、どうしたら……》

 現在進行形で 美由希に抱きしめ続けられる フェイトからのSOSに助けるというよりも宥める方向で念話を続ける
 このある意味 プレシアに通じる瞳の輝き……
 怖すぎる。 やり過ごすのが吉だよ?

 ……って思ってたんだけどね
 犬(狼?)生はままならないモノだよ

「だが、恭也には忍ちゃんが居て、なのはにも フェイトちゃん達が居るとなると……
 ははッ 美由希は我が家で唯一人、いき遅れ状態だな!!」

 ピキリ

 無理でした
 この親父は……

 『ガッハッハ』と豪快な笑いと共に 士郎の口から言葉が発された瞬間、ある場所……はっきり言えば一人の女性を中心に空気が凍り付き その場の雰囲気が一転する
 この親父、火に油を注ぐような真似を…… お願いだから、もっと空気読んでおくれよ
 たいがい とばっちり食うのは高町家でヒエラルキー最下層の アタシらなんだから……(ユーノ君はもっと下)

「い、いき遅れ…… そんな…… 私だけ? 私、まだ十代半ばなのに? まだまだ若いはずなのに?」
「しかも、恭也と忍ちゃんとの関係から、俺がお爺ちゃんになるのもすぐだろうな!!」

 ブチッ

 や、やばい…… やばいよ!? お願いだから、いい加減に空気を読んどくれよ!!
 何かが壊滅的に破壊され、倒壊したような音が聞こえたような気がする。 これは破滅へのカウントダウンが既に始まっている!?

「孫…… お爺ちゃん?
 なら 私は…… お、おばちゃん? その上、いき遅れのおばちゃん!?」
「み、美由希……さん?」

 来るべき未来予測の結果、部屋の隅っこでどんよりと丸くなってノノ字を書き始める 美由希と その哀愁漂う煤けた背中に、どう声を掛けて良いのか分からずに右に左に 士郎、美由希を交互に見渡す フェイト

 美由希、この後も神社で友達の手伝いをするっていってたけど……

 『どうせ 私は年末年始も彼氏と過ごすわけでもなく……お手伝いだもん』
 呪詛の如くブツブツと呟いてる。 ……こんなどんよりとした空気を漂わせる巫女さんのいる神社って嫌だなぁ。

《アルフ…… 私、何か悪いことしたのかな?》
《いや…… 今のは自爆?》
 うん、フェイトが気にする必要なんて全くないよ?
《……どうしよう?》
《どうするって…… こればっかりは美由希が乗り越えるしかないんじゃないのかい》
 無責任と言う事なかれ…… 余計な色恋沙汰に首を突っ込んでいたら命が幾つ合っても足りないことを既に学習済みなのさ!

「クス…… クスクスクスクス クフフフフフ」
「「美由希(さん)?」」

 あ……?
 ついに許容範囲ぶち抜き、壊れて……?

「いいもん…… いいもん……
 いざとなったら恭ちゃん……は、やっぱりちょっと以上に忍さんが恐ろしいから……
 いざとなれば なのはに…… なのはに貰って貰うから…… 従兄弟同士の結婚はおーk『駄目ですッ!!』」

 おわッ!?
 その音量に アタシの身体が大きく揺れる。 びっくらこいたよッ!!
 さらには使い魔としてのリンクを通して物凄く激しい感情の奔流がぁーーーッ!?
 そのあまりの激しさに、アタシは思わず小さく身を縮め全身を守るように強張らせる

「駄目です……
 いくら、いくら 美由希さんでも…… それだけは、それだけは駄目です!!」
「いや…… あの フェイトちゃん?
 じょ、冗談なんだから…… 出来れば、目にめい一杯涙溜めたまま切実に迫らないで欲しい、かな?」

 両手が白くなる程ギュッと強く握りしめて迫る フェイトの迫力を真正面から受けて、流石に 美由希も気圧され後ずさる
 フェイトは なのはに本気だから この反応も当然なんだろうねぇ
 なんかちょっとばかりもの寂しい気分が残るけど、フェイトが幸せで笑ってて、なのはも自分の大切な人達は何が何でも護るヤツだから……
 アタシが我慢しなくちゃいけないんだよね?

「グス……
 本当……ですか?」
「うんうん! 本当本当!!
 なのはは 私の弟だからね!! フェイトちゃんも、私を『お義姉ちゃん』って呼んでよ!!」

 鬱+愚痴モードを脱した 美由希が、フェイトを必死に それもちょっとだけ涙目で宥めている
 良かった。 なんとか丸く納まりそうな感じになってきた。 一安心かな?

「はっはっは!!
 美由希はフォローに必死だな」

 ……でも無かった

 はぁ……
 お願いだから少しは場の雰囲気ってヤツを読んどくれよ、この親父は……
 とりあえず、臑…… 弁慶の泣き所って場所に本気で噛み付いとく? ついでに大型獣化しとく?

「あら、士郎さん?
 フェイトちゃんを泣かすようなことをしてるのに…… なんだか楽しそうね?」

 右と左……
 やっぱり両方?
 どちらに噛み付こうかと悩む アタシの直上から あるお方の声が降りかかる!?
 こ、この声はーーーッ!?

「も、桃子ーーーッ!?」

 上擦り掠れる 士郎の半泣きっぽい声
 アタシは即座に爆心地(予定)から全力で離れソファーの下へと避難する
 呼吸が上手く出来ず息苦しい。 四肢がガクガクと震えて止まらない。 尻尾なんて小さく丸まり最初から平伏状態だよ
 プレシアとタメ張れる存在の 桃子に逆らう…… いや、この場で意見することさえ考えられない
 たとえヘタレと蔑まれても構わないよ。 なんせ ヴィータのギガントシュラーク並みの一撃をカートリッジの補助無しで連発出来るような大魔王と命のやり取りする程 アタシはバトルクレイジーじゃないから!

「……少し頭冷やそうか?」
「遺伝するのか その台詞!?」
「って!? かーさん 私も標的!?」

 まだ少し涙ぐむ フェイトを優しく胸に抱いて その頭をナデナデする 桃子さんの姿は絵になってるけど……
 高町父とか高町長女とか、他の二人に掛ける声が怖すぎ
 高町家最強の称号は伊達じゃないね!! さっきから震えが止まらないよ、ほんとにさッ!!

 まぁ、このままだと余波で アタシの心臓まで停止しそうだし、ここは フェイト経由でまとめてもらうのが一番平和的解決かなぁ?
 とりあえず念話を……

《なぁ フェイト。
 美由希もタチの悪い冗談だって反省してるみたいだし、そんなに感情的にならなくたって……》
《う、うん…… ごめん》

 うんうん、良い感じ。 このまま フェイトが上手くまとめてくれそうだよ

《だけどさ……
 フェイトは変わったよね》

 安堵に気が緩んだんだと思う。 心の奥底にある想いが何にも遮られることなく流れていく

《変わった?》
《ああ、前は無理して……我慢してばっかでだったよ》

 そうだよ…… そんな風に『我慢』ばかりの フェイトを見ているのはとても辛いことだったよ

《そうだったかなぁ……
 我慢しなくなったって…… 私、我が儘になったのかな?》
《『我が儘』?
 はは、そうだったかもね。 でも、以前みたいに無理矢理感情を押さえ込んでいた フェイトよりもずっといい。 アタシは今の フェイトの方が好きだよ》
《アルフ…… ありがとう》

 念話で、そして主と使い魔との繋がりを通して、感謝の念が伝わる
 嬉しくなる
 フェイトが今の自分を気に入っていることが分かったのが何より嬉しい

 ピンポーン

「あら、アリサちゃん、すずかちゃんが迎えに来てくれたみたいね
 フェイトちゃん、ここは 私が仕切っとくから、あそこで黄昏てる なのはを連れて早く出迎えてあげて」
「は、はい!」

 来客を伝えるベルが玄関から響く
 その時間から、そして高町家におけるヒエラルキーの頂点。 真の主たる 桃子が言うならば間違いなく アリサ、すずかだ
 アタシは、この後みんな一緒に はやて達を迎えに行ってから そのまま初詣に行く予定だったことを思い出す
 ……なのはの状況が面白すぎてすっかり忘れてたよ

《アルフ、行こう》
《あいよッ!!》

 フェイトに威勢良く返事をする
 どうか フェイトの、アタシの、こんな暖かい日常がいつまでも続きますように……
 うん、決めた! それが初詣での アタシの願いで、叶えたいっていう誓いだ

 ハッピーエンドは力尽くッ!!

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ロジカルなのはIF4話②ー4 おまけ

 注意事項
 今回は、前回間に合わなかった『4-2 その④』のおまけです。
 例によって ユーノ君の扱いが酷いので、そういう話が嫌な人は読むのをやめるか、もしくは全くの別人と思ってください。

 4-2 その④ おまけ

 『並行世界』
 それは『パラレルワールド』とも呼ばれている並行して存在、それぞれの未来へと進む異なる世界の群
 その複数の世界がクロスする特異点。 この何もない真っ黒な異様な空間ににおいて、たった一ヶ所だけ異彩を放つ場所
 その暗く深い闇の中でなお、眩い光を放っている場所がある
 そして今、その光源では六匹の小動物達が集い、くだらぬ悪巧みを塗り重ねていた……

小動物A「ククク……」
小動物B「本当に長い道のりだったよ」
小動物C「ようやく…… ようやく僕らの苦労が報われるんだ」
小動物D「ここまで幾多の苦難を乗り越えてきた……」
小動物E「やった…… 僕達はやったんだ……」
小動物F「ついに、ついにッ! ついにぃぃぃぃぃーーーーッ!!」

 笑っているナマモノ
 苦労を噛み締めているナマモノ
 回想シーンにどっぷりと浸っているナマモノ
 泣いているナマモノ
 抑えきれない喜びを漏らすナマモノ
 抑えきれずに大声で叫んでいるナマモノ

ALLナマモノ「「「「「「揃ったぁぁぁぁーーーーッ!!!」」」」」」

 黄色の毛並み、六匹のナマモノ……
 一応、フェレットと呼ばれている小動物の形態をとる変態達が、それぞれ幾つかの星が浮かびあがる七つの球を囲みながら狂喜乱舞している
 七つの球はまるで一つの太陽の如く神秘的、力強い山吹色の輝きを放ち、それら中心に散らばる変態達…… 名前を『ユーノ・スクライア』と言う。 それは並行世界の ユーノ達。 そして彼らが苦心の末集めた この七つの球が、どんな『願い』でも叶えてくれるロストロギアだと聞けば、その喜びようも納得出来るだろう
 彼らは遙か異世界へと このロストロギアを求め、七つの『龍球』を集めてきたのだ。 たとえ異世界同士でも同じ龍球ならば互換性があるだろうという楽観的な思い込みの元で……

 一応、彼らは表向き優秀な結界魔導士という設定ではあるが、既に現在(このSS)では それすら危ういかもしれない

ユーノA「七つの龍球かぁ…… 壮観だね」
ユーノB「一人一個のノルマ…… 一名リタイアした時はどうなることかと思ったよ」
ユーノF「ふふん まあ、余分に集めていた僕に感謝するが良いさ!!」
ユーノD「同じ僕なのに偉そうだなぁ……」
ユーノE「気にしちゃ駄目だよ。 並行世界の僕らなんだから若干の違いはあるさ」
ユーノC「だねぇー まあ、共通の目的があって集っただけだしね」

 六匹の ユーノがとりとめもなく苦労話を続け、その様子は第三者視点から少々うざったい
 どうでもよいことではあるが、一匹欠席しているらしい……
 まあ、こんなのを七匹書くのも面倒だから実際三匹位でも充分だったかも?<マテ

ユーノA「さて、次の問題は……」
ユーノB「どんな『願い』を言うか……だよね?」
ユーノD「僕らの出番を増やす『願い』…… 魔力量とかのパワーアップ?」
ユーノF「阿呆か…… 一が二や三になった所で百には勝てんわ」
ユーノE「AランクとSランクって、余裕でそれくらいの差が有りそうだよね」
ユーノD「じゃあ……権力?」
ユーノB「数の暴力……どこまで有効なんだろ?」
ユーノF「それって、アリが恐竜に勝てるかって世界?」
ユーノE「その『願い』だと僕ら……肉食恐竜達に骨の髄まで利用されそうだよね」

ALLユーノ「「「「「「うぅぅーーーーん」」」」」」

 どうやら叶えるべき『願い』を決めている訳ではないらしい
 その辺は勢いで集まった烏合の衆にすぎないレベルなのだろう
 けれど その瞳はギラギラと漏れ出す欲望に輝き強烈な戦意を放ち、それだけならば超一流と言えるのかもしれない

 エロじゃない ユーノは ユーノではないのだ<ここ限定で

ユーノA「出番を確保するなら、一期のジュエルシード回収期間が延長されれば増えるんじゃないかな?」
ユーノD「……『フェイト・テスタロッサを消してくれ』?」
 それは小さな囁き……
ユーノE「ば、馬鹿ッ!! 全国に散らばる フェイトファンを全てを敵に回す気か!!」
ユーノD「だ、だって出番が!!」

 ユーノDの問題発言に一同が大きく揺れる
 導き出される最悪の結果は ユーノファンと フェイトファンの激突
 否、ユーノファンの方々も ここの ユーノ君達には味方しないだろう。 捻り潰される未来しか想像出来ない

ユーノB「穏便に『アリシア・テスタロッサを生き返らせてくれ』で良いんじゃない?
 二期での夢世界が延々と繰り広げられるってことで……」
ユーノF「それは事実上のリタイアって言わないか?」
ユーノA「フェイトがジュエルシード集める理由無くなってるもんね」
ユーノC「それに フェイトが出ないと今のリリカルなのはの人気はありえないし……」

 ユーノDに全員でツッコミながらも、その方向を無視することも出来ず真剣に話し合いをする ユーノ達
 たとえ栄光の未来を掴めたとしても、死んでは意味がない。 二階級特進では全くの無意味なのだ
 彼らの出番不足は それほどに…… 切実なのだ

ユーノD「……僕ら要らない子?」
 今度は独り言だった
ユーノA・B・C・E・F「「「「「ッ!? 言うな 馬鹿ーーーーッ!!!!!」」」」」

 ユーノDの、あまりに心ない発言……
 ある意味真実を捉えすぎた自虐的な言葉に涙目のフェレット達が殴る蹴るのツッコミを連発する

ユーノD「いたたぁぁ…… な、殴らなくても良いじゃないかよ……」
 度重なる不用意発言、ユーノDは既に村八分状態?
ユーノA「いいか僕達、よく考えろよ?
 収集をかけた ユーノの中で集まった僕達…… その勇気溢れる僕達と、薄情にも集まらなかった僕達との違いはなんだ?」
ユーノE「本質的には同じ僕なのに、現状に耐えきれる理由と耐えられない訳……」
ユーノF「その差を分かつ明確なライン……」

 シカト中の ユーノDを除き、全員が息を呑み込む
 同じ瞬間、彼ら(一名除く)はついにある答えに辿り着いたのだ

ユーノA・B・C・E・F「「「「「「『なのは♂』だぁぁぁーーーーッ!!!!?」」」」」」

 その名は『高町なのは♂』
 絶対なる力を具現せし人外の存在
 白き魔王にして死を司る冥王
 彼の者の意に反し…… その命を全うせし者なし!

ユーノA「そうだ…… そうだよ! なんで僕らの『なのは』は男の子なんだよ!!」
ユーノC「しかも、その容姿は百歩譲ってさえ、女の子にしか見えない!!」
ユーノE「そのくせ女の子っぽいことを人一倍気にして、突っ込むと撲殺されるのは理不尽だよね!!」
ユーノB「畜生! ここに来てない僕らは混浴とか同衾とか…… ワクワク・ドキドキ・ムラムラなイベント盛りだくさんだよ!?」
ユーノF「奴らが そんな美味しい立場だったとは…… 絶対に許せン!!」

 自分達が この場所に集まった理由を悟る
 同じ自分なのにあまりに不遇。 それ故、同じ辛い境遇の自分達に、彼らの結束力がモリモリと固まっていく
 ついに希望を見つけ、奮起する ユーノ・スクライア!!
 だが、その怒りや不満が理不尽の根元的存在たる『なのは♂』ではなく、美味しい立場を享受している自分自身に向いていくあたり……
 即ち、それが ユーノ・クオリティ!!

ユーノA「つまり僕らの『願い』は、全ての『高町なのは』を『女の子』に!」
ユーノB「『高町なのは♂』を消してぇ『カッ!!』」

 不遜な発言を発しようとした ユーノBに降りかかるは裁きの閃光
 太く、巨大な桃色の輝きが ユーノBの小さなフェレット・ボディを的確に覆い尽くし……
 後に残るのは小さな影。 ただ、それだけが ユーノBが存在していた証
 影だけを残し、髪の毛一本、爪先の一欠片さえも残ることが許されない

 ユーノB・完全消滅でリタイア!!

ユーノA・C・D・E・F「「「「「何ィィィィーーーーッ!?」」」」」
???「アハハ もう ユーノ君ってば…… しょうがないなぁ」

 未知(かもしれない)の恐怖に打ちひしがれる ユーノ達に降りかかる楽しく嬉しそうな嗤い
 一瞬にして失われた尊い(かもしれない)命の輝きを嘲笑う その硝子の如く透き通る声が ユーノ達の心臓に突き刺さり、強烈な圧力でわし掴み握りつぶそうとする

 ユーノの天敵……
 『高町なのは♂』その人が ユーノ達を見下ろし、見下していた

ユーノA「ヒィッ ヒィィィィーーーーッ!!」
ユーノC「ま、ままままさか!?」
ユーノF「こ、ここここんな場所にまで!?」
ユーノD「あ、悪魔……」
ユーノE「ど、どうしてバレて……」

 フェレットとして、これまでないというほど盛大に表情を引きつらせる ユーノ達
 けれど、彼の驚きは この程度で済んだりはしなかった
 彼の真の恐怖は これより後始まる……

なのはA「アハハハハハハハ……」
なのはB「ウフフフフフフフ……」
なのはC「クハハハハハハハ……」
なのはD「ククククク……」
なのはE「クフフフフフフフ……」
なのはF「フフッ」

 なのはG以下は省略……

 九歳なのはを中心に十五歳、十九歳も…… 中には六歳なのはまでいる
 ユーノの上空を覆い尽くす白、白、白……
 数え切れないほどの なのは達。 その強烈な存在感に、黒い世界が真っ白へと塗り替えられていく
 見上げる愚者達の心を、絶望の白へと染め上げられていく

ユーノA・C・D・E・F「「「「「ひッひぃ一人じゃないの!? ……やばすぎ!!」」」」」

ユーノF「落ち着け僕達!! 忘れちゃ駄目だ! 僕達は優秀な結界魔導士のはずだろ!!
 ここはみんなで結界を張って堪えるんだ!! そして、その間に誰か一人が龍球に『願い』を!! 僕らの悲願を、今こそ叶えるんだ!!」
 一人、フェレット四肢を踏ん張り力の限り魔力を振り絞り障壁を展開する漢・ユーノF
ユーノA・C・D・E「「「「おおッ!!」」」」

 その言葉に勇気を得て猛る ユーノ達
 即座に龍球を抱え、一斉に回れ右で逃走を謀る
 哮る ユーノFだけを置き去りにして……

ユーノF「え!? ちょッ!? 護りは僕一人だけ!? なんでみんな一斉に後退してるのs『ボシュッ!!』」

 遠ざかっていく五つの足音を耳に、悲鳴をあげて突っ込む ユーノF
 彼の展開する障壁はSクラスの攻撃でさえ防ぎきる最高レベルのモノだった。 だが、ユーノF一人に対して なのはは数え切れないほどの圧倒的多数
 それに対し、最低でもAAAクラス以上の魔導士達が全力全開の一撃を一斉射撃しているのだ。 とてもAクラス魔導士一人で支えきれるレベルの話ではない
 その強力過ぎるエネルギーの束に障壁は紙のようにあっさりと貫かれ、一人の存在を消失させるには充分すぎるほどの圧倒的な暴力にさらされ……

 ユーノFはこの世から姿を消した
(ユーノF・凶悪な砲撃魔法による完全消滅でリタイア)

 一方、消滅する ユーノFに涙しながら、彼の想いを無駄にせぬように力の限り駆け抜ける(見捨てたとも言う)ユーノ達は……
 白い大魔王からの逃走を諦め、距離を空けることだけに専念し、その犠牲を代価に充分な距離を確保する
 満を持して準備を整え、最後の呪文を唱えるべく大きく息を吸い込み

 そして勝利の笑みを浮かべながら……

ユーノA・C・D・E「「「「いでよ ○龍!!」」」」

 シーーーーーン

 ユーノAは 呪文を 唱えた!!
 しかし 何も 起こらなかった!!
 ユーノCは 呪文を 唱えた!!
 ユーノCの 声が 虚しく 響きわたった!!
 ユーノDは 呪文を 唱えた!!
 なのは♂達に 居場所が ばれた!!
 ユーノEは 呪文を 唱えた!!
 なのは♂達が 妖しく 微笑んでいる!!

 なのは♂達が微笑みと共に ユーノ達を大きく取り囲みながら少しずつ その包囲を狭めていく
 絶対に逃がさないように……
 確実にこの世から淫獣達全てを消し去るように……

ユーノD「あ、あれ? どういうこと!?」
ユーノC「出ない? 出ないよ!?」
ユーノA「そんなはずは…… 龍球だってちゃんと七つ……」
ユーノE「一星、二星、三星、五星、五星、六星、七星…… あ?」

 ユーノDは 混乱 している!!
 ユーノCは まごまご している!!
 ユーノAは 龍球を じっと 見つめている!!
 ユーノEが 何かに 気付いた!?

ユーノA・D・E「「「四星球がない!?」」」

 そこには山吹色のシールを貼り付け、無理矢理四星球に変えようとしながら、無惨に失敗した五星球の姿
 正直、こんな下手な細工で誤魔化そうとするヤツもするヤツだけど、幾ら喜びに目を曇らせていたとはいえ、こんなモノで誤魔化される方もされる方である

ユーノE「誰だよ!! 四星球担当は!!」
 答えは当然、無言を押し通そうとする ユーノ
ユーノC「し、仕方ないじゃないか!! 金髪の野菜ファミリーの隙をついて龍球を盗み出すなんて絶対無理だよ! そんな猫仙人から唯の水を奪うよりも難しいイベントなんて出来るはずないだろッ!!」
ユーノD「言い訳すんな!! 今、この瞬間にも僕達の生き死にが懸かってるんだぞ!!」

 ほとんど逆ギレ状態の ユーノC
 流石に高町一家以上の戦闘民族一家を相手にしては、如何に隠密行動に適したスクライア一族でも無理だったらしい
 飛び交う罵詈雑言。 だが、彼らは このロストロギアを集めようと考えた時点で最強の戦闘民族とぶつかる可能性について考えなかったのだろうか?

 無謀な計画故に崩れ始めると止まることがなく、 穴がボロボロと現れてくる

ユーノA「落ち着け僕達!! 死活問題だからこそ冷静さが必要になるんだよ!!」
 リーダー的位置にいる ユーノAが必死に全体の手綱を取ろうと必死になる
ユーノA「だ、誰かついでに集めていたりしないの!?
 とにかく持っている龍球全部出してッ!!」

 コロコロ……ゴロリ

 どこからか山吹色に光る野球ボール大の球を取り出す ユーノ達
 中にはサッカーボール並みの球があったりするが…… 何故、小動物形態の彼らが隠し持っていたのかなどと考えてはいけない
 これは『おまけ』扱いな話で、ご都合主義万歳な話だから、気にしたら負けなのです

ユーノA「一、一(大)、一、一、二、二、三、五、五、五(大)、六、六(大)、七、七、七……?」
 四星球無し!
ユーノD「だ、駄目だぁーーーッ!?」
ユーノE「っていうかナメクジ星の龍球まで入れたのは誰!? 僕達ナメクジ語なんて話せないよ!!」
ユーノA「そのでかい球は…… 抜け、弾け、外せーーーッ!!」

 慌てふためき統制を失う。 そして、絶体絶命のピンチにブチ切れそうになる ユーノ達の理性
 でも、わざわざナメクジ星までいって龍球集めてきた兵までいたんだ……
 冷蔵庫一味と鉢合わせしなくて良かったね

「「「「「アハハ ユーノ君達…… 無駄なあがきはもう良いのかな?」」」」」<山盛り なのは
《《《《《Load Cartridge》》》》》<必殺のエクセリオン発動中

 パニくる ユーノ達を尻目に、その包囲網を完全に完成させる最強なのは軍団
 逃げ道を完全に塞ぐことで、相手が窮鼠と化す可能性さえも妖艶に嗤い倒す なのは達。 そして、かつてのマスター滅殺を無機質で機械的な合成音でありながらも楽しげに魔力制御を進める なのはの手にしたデバイス達

ユーノA・C・D・E「「「「ヒ、ヒィィィィーーーーッ!!!」」」」

 始まるのは死へのカウントダウン

 ガコン……
 蓄えられた魔力を放出し空薬莢が大地に落ちる
 ガコ ガコン……
 空薬莢が ユーノ達のいる大地へと雨のように落ちる
 ガコッガコッガコッガコッガコッガコッガコッガコッガコッガコッガコッガコッガコッガコッガコッガコッ
 空薬莢が ユーノ達のいる大地へと豪雨のように降り注ぐ……
 ちなみに、空薬莢はかなりの熱を持っているため、当たると火傷は必須

ユーノA「って!? いったいどれだけの量をロードしてるんだよ!?」
ユーノE「あれだけ負荷をかけて…… どうして身体とデバイスが無事なんだよ! 理不尽だよッ!!」
ユーノD「不味い…… これは不味いよッ!?
 あの絶対的な魔力量…… 僕達を確実に消滅させる気だよ!!」
ユーノA「と、とにかく呼び出すんだ!! 駄目もとだろうと全力で呼びかけるんだ!!」
ユーノC「う、うん!」

 チャージされる桃色の輝き、自分達を殲滅するべく用意された その一つ一つが充分過ぎる破壊力を持っていることに戦慄する
 どんなに嘆き悲しんでも既に逃げ場はない。 されど、生存への要求は生物共通の生理
 彼らには生物の本能を超えるほどの精神も、それらをねじ伏せるだけの信念も持たない。 それゆえに彼らは、ただ生存という本能のためだけに無謀な前身を選択する

 人は それをやけくそと言うのだが……

ユーノA・C・D・E「「「「いでよ ○龍!!」」」」

 カッ!!

 その言葉に反応し、ナメクジ星用を除外した十二個の龍球が更に強く激しく輝く
 願いの叶うという期待と生存への道が開けたことに対する安堵に満ちるは ユーノ達の瞳

 ドドォォォォォン!!

 黒雲が辺りを覆い、闇が闇をを深くする
 そんな暗闇を激しい雷が切り裂き、異世界に激しい天変地異を引き起こしていく
 それは彼らの『願い』が叶うことの前兆であろうか?
 けれど…… それでも なのは達は余裕の表情を全く崩さない

 ……ポテチ

 何かが大地へ墜ちる音が響く
 何か、柔らかい湿ったようなモノが潰れる音
 それはまるで腐ったミカンが地面に落ちて潰れるような気持ち悪い音

『『『願いを言え…… どんな願いも一つだけ叶えてやる』』』

 ウネウネ ウネウネ

 目の前に奇妙なナマモノがいた。 その奇妙なモノ蠢きながらも三重に重なる声で偉そうに話しかけてくる
 顔はもしかしたら龍……と言えなくもない。 けれど それが三つ、しかも尻尾にあたるだろう部分に無理矢理くっついているのはどう考えてもおかしいだろう。 さらには足が八本で それが生えている部分が背中だったり、額だったりと……
 不気味過ぎて、とても詳しい明確に描写も出来ない

 それはつまり、どう見ても『変』としか言いようのない緑色のナマモノだった

ユーノA・C・D・E「「「「…………」」」」

 顔を青ざめさせ、言葉もない ユーノ達
 自分達に訪れるであろう未来予想が怖すぎて、とても『失敗』という単語を出すことが出来ない
 心弱き者達は、容易に都合の良い理想へと逃げ込む

ユーノA「い、一応…… 成功、かな?」
ユーノE「……顔が三つでちょっとステレオ状態?
 顔付き尻尾が三つで手が八本とか凄いね……」
ユーノD「これ……既に生き物に見えないよ」

 時折否定の言葉を漏らしながらも、現実を都合良く受け取ろうと必死に言葉を探す
 それはどこからどうみても無駄な努力だ
 その無様の様子を、なのは達は残酷な微笑みで見つめ続ける
 『願い』を言う瞬間に眼下の生ゴミ達を焼却処分するのだろうか?
 『願い』を言う瞬間に それを阻止し、逆に『ユーノ・スクライアを消してくれ』とでも願うのだろうか?
 奇妙な空白の中、ユーノ達の胸中を止めようのない不安だけが渦巻いていく

 両サイドの緊張感に耐えきれなくなったのは、やはり ユーノ達だった

ユーノA・C・D・E「「「「『高町なのは♂』を消してくれぇぇぇぇーーーッ!!」」」」
『『『……無理』』』

 即否定。 ○龍もどき弱すぎ……

ユーノA・C・D・E「「「「……え? な、なんでッ!?」」」」
『『『神の力を大きく超える者に、一方的に干渉することは出来ない……』』』

 これが なのは達が魅せた余裕の原因か、なのは♂の力は○龍もどきを大きく超えているらしい
 その余裕の なのは達とは反対に ユーノ達が絶望感に耐えきれず両手を膝を大地につける
 フェレットが元々四足歩行だろうと突っ込んではいけない。 彼は それほどのショックを受けているのだ

ユーノC「う、嘘つき!!
 『どんな』『願い』『も』って…… 言ったじゃんかーーーッ!!」
 八つ当たるモノ
ユーノE「なのはは…… 神さえ超える化け物だったの?」
 衝撃の事実に打ちひしがれるモノ
ユーノA「死ぬ…… 確実に死ぬ……
 僕達はとんでもない相手を敵に回していたんだッ!?」
 今更ながらに誰を回したのかを知り、恐怖にのたうち回るモノ

 そして……

ユーノD「い、嫌ぁーーーーっ!!
 夢…… 夢だよね!! これって夢だよね!!
 『夢おち』が過去二回もあったんだから…… 『二度あることは三度ある』っていう諺もあるんだから……
 お『願い』!! 誰か夢だと言って!! 夢だと教えて!!」

『『『残念……現実
 【三度目の正直】だ』』』

 ○龍もどきが答える、答えてしまう
 錯乱した ユーノDがやった……
 暴走した ユーノDがやっちまった……
 本当に、とんでもないこと(ユーノ主観で)をしてしまった……

ユーノA・C・D・E「「「「え? ええぇぇぇーーー!?」」」」

 あまりのショックに平静さを取り戻す ユーノ達
 どうやら こんな状況にも関わらず、心のどこかで『ギャルのパンティおくれッ!!』とか原作そのままのことを考えていたらしい。 その切実で、だけど他人から見ればしょうもない『願い』さえ断たれ、ユーノ達の瞳孔が開き、小さなフェレット心臓が大きく脈打つ

『『『願いは叶えてやった…… ではさらばだ』』』

 このピンチを助けてはくれなかった癖に最後まで偉そうな○龍もどき
 『願い』を叶えてやったことに少しだけ満足げに頷き、その姿が薄くなっていく
 そう…… ○龍もどきは その使命を終えたのだ

 バシュ バシュ バシュゥゥゥゥン

 龍球へと戻り、各地へと散っていく山吹色の輝き
 果たして それらは無事に元の世界へと戻れるのだろうか?
 この行為の結果、あの世界の未来が変わってしまったとしたら、ユーノ達に新たな罪状が積み重ねられたりするのだろうか?
 死する運命にある者達には、そんなことを心配する必要さえないかもしれないが……

ユーノA「ちょ、ちょっと!!」
ユーノE「ち、違う!! やり直しを要求するよ!!」
ユーノC「待って…… 僕達をおいて逝かないでよぅ!!」

 あ……?
 こいつら、もしかして現状に気付いていない?
 もしくは、怒りに目が眩んで一時的に記憶を棚に上げている?

ユーノA・C・E「「「なんてことをしてくれたんだ!!」」」

 流石、元は同じ存在である ユーノ達
 まったく同じタイミングで一斉に ユーノDを責めまくる
 その言葉には全く容赦が無く、視線だけでも人(相手は同じユーノ限定だけど)を殺せそうなほど殺気立っている

 それに対し、ユーノDはヒクヒクと小さく肩を震わす

ユーノD「う、五月蠅い五月蠅い!!
 なのはが女の子化したからって僕達がもてる訳じゃないだろ!! そんなのは『痩せればもてる』って考えている奴らと同レベルさ!!
 そんな程度で僕らが女の子にもてるわけないだろッ 馬鹿!!」

 やっぱり逆ギレだった
 しかも、その言葉には他ユーノ達にも隠した衝撃の真実が隠されていた
 そして、ユーノDがブチ撒ける衝撃の真実は……

ユーノA「な!? それはどういう……」
ユーノD「……僕の世界にいる『なのは』は女の子だよ! バリバリに可愛い女の子だよ!!」

 なのは♂な世界から集った同志という、彼らの共通認識が音を立てて崩れ落ちていく
 では、このユーノ達にとって、真に共通する状況とは一体なんであろう?

ユーノE「なんだって……?」
ユーノD「そして フェイトとガチレズ!! 付け入る隙間もない位に馬鹿カップル状態!!」
ユーノC「そんな…… フェイトと」

 もうお解りだろうか?
 彼らの世界において共通することは……
 なのは・フェイトのカップリングが成立しているということ!
 既に ユーノの立ち入る隙間さえないくらいにラブラブ!!
 その世界の ユーノ達は置物当然で 既に無機物扱い!!

ユーノD「『仲人は友達の ユーノ君に……』って! 力尽くで法律変えてゴールインさ!! 僕なんて最初からアウトオブ眼中なのさ!!
 分かったか 僕達!!」

 熱い涙を流し肩を大きく震わせ、力の限り絶叫する ユーノD
 体温の調整機能さえも暴走させる激しい感情が、大量の汗と涙を真っ黒な大地へと垂れ流し続ける
 自身の命さえ大きく削りながらも『逆ギレ』という、ある意味とても情けない行為に力をつぎ込んでいく

 そして、その命懸けの逆ギレを受けた三匹のフェレットは……

ユーノA・C・E「「「き、貴様ーーーッ!! なのは達と一緒に女風呂に入った 僕だったのか!!」」」
 こいつらも逆ギレした……
ユーノD「ぎぃやぁぁぁぁーーーッ!!!!!!」

 噛み付き、引っ掻き、舐め回し
 最後の攻撃は女湯に入り、フェレットボディに染み込んでいるだろう成分を少しでも奪いとるためであろうか?
 一応、結界魔導士に過ぎない彼らが、ひどく好戦的に異次元世界の自分である ユーノDをひたすらボコり続ける

 ユーノD・同性からのリンチとセクハラでリタイア!!

ユーノA「悪は滅びた……」
ユーノE「一人だけ幸せなんて許せないよ」
ユーノC「羨ま…… いや、死んで当然だよね」

 裏切り者を血祭りに上げ、満足げに頷き合う ユーノ達。 その表情は溜め込んだストレスを吐き出し、かなり清々しい
 けれど、やっぱり彼らは忘れていた……
 彼らもまた首筋にナイフを突き付けられ、その命運を握られる哀れな(でもないのか?)存在にすぎないという現実を
 その上、そのナイフを握る者達には、彼らを助けようなどという気持ちは最初からないという事実を

「「「「「念仏は……終わったみたいだね?」」」」」<山盛り なのは

 それは有頂天になる愚か者達に振り下ろされる桃色に輝く鉄槌
 それは全てを消失させ、光へと返す破壊の一撃
 一片の躊躇も戸惑いもなく、トリガーが引かれる

ユーノA・C・E「「「……え?」」」

 間近に迫る桃色の輝きに間抜けな声が漏れる
 果たして、苦痛さえ与えられることなく消滅させられることは『死に方』としてはどうなのだろうか?

 ドゴォォォォーーーーーーン!!!!!!

 この安楽死は なのは達の最後の慈悲?
 ユーノA・C・E 圧倒的砲撃魔法で消失(ある意味安楽死)

 この日、一つの特異点が原因不明の大爆発により、周囲の空間ごと消失することになる……

 ちなみに欠席した ユーノGは……
「うーーん うーーーん 体臭が…… 加齢臭が目に鼻に染みるよう…… 涙が、鼻水が止まらないよぅ
 パフッ パフパフって…… そんな、やめてぇ…… ただ、皮下脂肪のほとんどない固い大胸筋を筋肉で動かしているだけじゃないか……」

 ……トラウマと引き替えに命拾い?


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 ユーノ君・人物設定

ユーノA
 一応、六匹の ユーノ君達の中ではリーダー的立場で物事を進行していった
 報われることのない結果は、こいつが主導したからだろうか?

ユーノB
 流され ユーノ……
 瞬殺されて出番もほとんどなし

ユーノC
 四星球収集担当だったが失敗、他の龍球で誤魔化し傍観すた ユーノ君
 負い目があるためかセリフは少な目…… 沈黙は金?
 そのおかげで目立つことなく少しだけ長生きするが……
 もっと自己主張しろよ

ユーノD
 実は なのは♀の世界から来ていた ユーノ君
 なのは♀・フェイト♀が結ばれた世界であり、ユーノ君は友達、もしくは小動物扱いがデフォ
 その世界では既に風景と同化している辺り、無視される苛めと同レベルの状況

ユーノE
 今回はツッコミ役を果たした ユーノ君
 少しばかり毒あり

ユーノF
 今回登場した中では最も『漢』を魅せてくれた ユーノ君
 元いた世界では なのは♂にガチで告白…… 結果、玉砕している
 男と承知した上での告白、失恋を味わいながら、輝く未来を掴むために参戦する

ユーノG
 今回は欠席したロジカルIFの ユーノ君
 そのトラウマと引き替えに命拾いをすることになる彼の悪運は、果たして強いのだろうか?

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ロジカルなのはIF4話②ー4

 4-2 その④

 地面が揺れる 私の身体が揺れる 私の世界が揺れる
 それは この今も動き夕空へ登り続ける観覧車だから?
 あるいは そこに吹き付ける風のため?

 それとも……

「私、はやての持つ闇の書問題が解決したら…… 管理局に入ろうと思ってる」

 私の目の前に座る金色の少女が確かな口調で告げる
 場所は既に頂上から下り始めた観覧車の中、その場に居合わせるのは揺るがない強い決意を示した その少女を含める 私達四人
 オレンジ色へと変わった空が、大きく傾いた沈みかけの太陽が発する光が観覧車の窓から 私達の座る白いシートへと差し込み、そこに座る少女の美しい金髪と確固たる意志を秘めた紅い瞳をさらに神秘的に侵しがたいモノへと昇華している

 その少女の存在を表す名は『フェイト・テスタロッサ』
 既に 私の親友と言っても差し支えない存在である彼女は以前、私闘の原因となった あの夜とは比べモノにならないほどの決意を持って この場に立っている。

「……フェイトちゃん『なのは、フェイトの話はまだ終わってないわ…… ちゃんと最後まで聞きなさい』 アリサちゃん!?」

 私の言葉を遮るのは静かで落ち着いた声
 同時にギュッと握りしめられた掌から伝わる アリサちゃんの温もりが 私の起こそうとする行動全てを抑え制してしまう

「前は なのはちゃんと喧嘩しちゃったことに対する相談だったよね?
 今回は、どうしてそういう考えに至ったのか…… ちゃんと 私達に話してくれるんだよね?」

 フェイトちゃんの隣に座る すずかちゃんも、私の隣に座る アリサちゃんも、一言たりとも発することなく沈黙を保ち、ただじっと待ち続けている
 蒼、碧、紫の中に一人の少女の姿が閉じこめられ、その異なる輝きを魅せる三対の瞳がただ一ヶ所に見つめるためだけに集まっていく

「うん、聞いて欲しい、聞いて欲しいんだ
 なのはだけじゃなく、すずか、アリサに…… 今日、ここにいるみんなにも…… ちゃんと」

 私自身のモノも含め、様々な想いを込め問いかける三対の視線を真正面から受け止めるのは強く輝く紅い瞳
 普段は幼い言動を魅せる フェイトちゃんが、今このときだけは その年齢、容姿以上に大人びた雰囲気を纏っている

 ガタガタ ガタン

 私達を乗せるゆりかごが僅かな音を響かせ小さく揺れる。 おそらくそれは 観覧車は最頂点に達し下降を始めたからのだろう
 周りを覆う大きな窓から差し込まれる海鳴の街並みが夕日に照り輝き、感動的な景色を作り出す
 それは恋人達にとって格好のデートスポットと噂されるに値する風景

 それも、こんな状況でないのならば

 不意に訪れた空白の瞬間を今日の楽しく尊い思い出が次々と塗りつぶし埋めていく
 初めて乗ったティーカップを、何故か力の限り高速回転させた フェイトちゃんと、それに対抗したため、一緒になって目を回してフラフラになっていた アリサちゃん
 軽快に走る赤、青、白、黄と四種のゴーカート。 その専用レーンでド迫力なカーチェイスを繰り広げた アリサちゃん、すずかちゃんと、その遙か後方で対照的な安全運転をする 私、フェイトちゃん

 今日の午後、淫獣に天誅を加えたあとの思い出が、その僅かな沈黙を埋めるかのように 私の脳裏を駆け抜けていく

「私は…… 誰かの幸せを…… ううん、違う。 そんなに傲慢で、そこまで大それたことしたいわけじゃない」
 小さく首を振るい、言い換える
「私は みんなの笑顔が好き。 だから、私は それを大切に、護れる人になりたいんだ」

 むずがるように時折どもり、想いを上手く表せないまま詰まり詰まりになる言葉
 けれど、そこに込められたのは確かな意志
 それは飾ることのない真っ直ぐで純粋な想い

 再生される記憶の中、楽しげに話す数十分前の フェイトちゃんの笑顔に、その真摯な声が重なりあっていく

 強くて、それでいて優しさを秘めた声は、ただそれだけで 私の心に激しく切実に、どうしようもなく訴えかけてくる
 私の心を抱きしめるように捉えて離さない

「護りたいっていう この想いは…… なのはが、アリサが、すずかが、ここにいるみんなだけじゃないよ?
 私の周りにいてくれる 私の大切に思うみんなが、寂しいとか辛いとか悲しいっていう想いを軽く、本当に簡単に吹き飛ばすくらい暖かくて優しい笑顔をたくさんくれたから、私は そういう笑顔を持つ人達を護りたい……護りたいと願うんだ
 それが 私の居るこの世界に幸せを満たすことだと思うから」

(出来るわけない…… そんな夢みたいなことを出来るわけないよ)

 その言葉に何故か心のどこかが軋む

「でも、フェイトの それはただの理想よ
 どんなに願ってみても…… 結局、形の無い空虚なモノに過ぎないわ」

 それは否定の言葉
 そして個人の力量程度では到底変えられない、変わることのないモノ
 誰もが一度は願い、何度もぶつかり挫折する現実
 けれど、アリサちゃんの声に フェイトちゃんへの侮蔑や拒絶の意志なんて少しも感じられない

 『それは多分、一生を費やしてさえ届くことのない願い』

 静かに見つめ続ける アリサちゃんの瞳が、フェイトちゃんの心に問いかけている
 アリサちゃんは自分勝手な思いこみでの侮蔑はしない
 けれど、そこに誤魔化しも沈黙も許さない
 そう感じさせるだけの威圧感を雰囲気を醸し出している

「うん、理想だね、分かっている
 現実はきっと アリサの言うよりも遙かに、夢見るには残酷で、追い求めるには厳しくて、弱い人達にも容赦が無い世界。 でも、それでも 私は それで本当に救われたから、ここで笑顔の意味を知ることが出来たから……
 それはたしかに 私の大切な部分を支えているモノで、私の全てを賭けてでも信じるに値するモノだよ」

 膝の上に置かれたままの拳がさらに強く握り込まれる
 それでも フェイトちゃんの願う世界は砕けず崩れなかった
 その紅い瞳の輝きは強い向かい風にも衰えることなく、ますます燃え上がっていく

 フェイトちゃんはどうして……
 どうして そこまで誰かを、自身を信じられるんだろう?

「管理局が理想の組織じゃないって分かっていても、フェイトちゃんには信じたい想いがあるんだね?」
 次いで言葉を発した すずかちゃんの口元からいつもの大人びた穏やかな微笑みが消えている
 そこにあるのはあからさまな不信感
 当然かもしれない。 すずかちゃんは アリサちゃんと一緒にいる所を、闇の書の主である はやてちゃん達を自分達の都合で利用しようとした管理局の一派に襲われたんだから……

「すずかちゃん……」

 私の胸の奥底から漏れる吐息
 そして差し込む夕日の影響か、すずかちゃんの瞳が若干の赤みを帯びていくようにも感じる
 奥深くに滞り内在するのは鋭く冷たい感情
 信用や信頼は何もない所から産まれたりはせず、一夕一朝で成される代物じゃない
 反して不信や不満は容易に募り育っていく
 管理局そのものに対する根強い不信。 それは二人を拉致しようとしたのが局員だったという事実だけでも充分に違いない

「すずかが言うように、理想がそう単純に割り切れないことも分かってる
 以前、二人を襲ったのが はやて達の立場を擁護していた側の一員だったってことや……
 人の技術により産み出された人工生命である 私が、そこでどんな風に見られ、言われ、扱われる可能性だって……
 でも、私は知ってる……
 世界は悲しいことだけじゃない。 理不尽なことだけじゃない
 リンディさんや 桃子さん、クロノ。 そんな理不尽なことに抵抗する人達だってたしかにいるんだ」

 フェイトちゃんは理解している
 その選んだ道の先は決して平坦でないことを
 この世界には理解出来ず理解されない人間もいるということを
 だけど フェイトちゃんは
 秘めた想いは、固いだけじゃない柳のしなやかさで向かい風に折られ屈することなく受け止める

(フェイトちゃん……
 嬉しいことと悲しいこと。 暖かいモノと冷たいモノ。 優しさと残酷さ
 常に矛盾しながらも互いに影響を及ぼし合うモノで成り立つ この世界は…… 決して優しくなんてない。 優しくなんてないんだ
 だからこの世が・・・地獄そのものなんだよ)

 辛くて苦しくて冷たいだけの閉ざされた世界なら、何もしないまま全てを諦めることも出来たはずなのに……

「救うとか…… 助けるとか…… 軽々しく口に出来るほど簡単で安易なモノじゃない
 どれだけ願い祈って、たくさんのモノを掴もうとしても…… 掴みきれないモノが出てくる
 たとえ掴めたとしても、掌からこぼれ落ちるモノが出てくるんだ」

 救えなかった小さな命が、時の流れの中、熱を奪われ命の輝き失っていった あの昔の光景がちらつき、私の心を固く縛り付けている

「その度に、その度に フェイトちゃんは悲しむんだよ? その度に何度も傷つくんだよ?
 たしかに知らない誰かを救えるかもしれない、だけど救えなかった誰かの、見ず知らずの他人のために苦しむんだ……
 それでもいいの? それでも後悔しないの?」

 フェイトちゃんの想いを認めるしかないこと理解してる
 既に言葉でも、相手を叩きのめす強い力でも、こんなにも醜い利己的な本音をさらけだしてさえも止められなかった
 今更 こんなことが無意味だって分かっている。 けれど、それでも納得出来ずにいる
 私は否定と拒絶の言葉をどうしても遮ることが出来ない
 言葉続ける程に そこに込めた想いがどんどんすれ違い、乖離していく

 結局のところ…… 私は フェイトちゃんが羨ましいんだと思う

 正しいと思うことは正しいと、良いと感じることは良いんだと、その心から沸き上がる感情を素直に本気で信じて信じ続けられる フェイトちゃんの優しい心がとても大切で、泣きたくなるくらいに暖かくて、なにより羨ましくて、どうしようもなく眩しくて、そして奥底で嫉妬し妬んでる
 所詮、私は私にしか成れないと分かっているつもりいてさえも、そんな風に出来ない自分をどこか蔑んでる

 それなのに、それなのに フェイトちゃんは

「なのは優しい……本当に優しいね」

 自己嫌悪…… 落ち込み塞ぎ込んでいく 私に流れ込む フェイトちゃんの声
 私に向けられるのは、はにかむように微笑みと包み込むような暖かい言葉

(違う…… それは、それだけは絶対に違うよ フェイトちゃん
 私は優しくない優しくなんてない。 絶対に フェイトちゃんと同じなんかじゃない
 ただ利己的なだけ、自分勝手を押し通したいだけ)

「不思議だね……
 私はいつも なのは達の優しさを感じてる。 一人じゃないって感じるんだ。 だから大丈夫。 私は大丈夫だよ」
「フェイトちゃん……」

 フェイトちゃんの想いは どこまでも どこまでも
 歪むことも知らないほど無垢で……
 真っ直ぐなまでに純粋・純白で……
 私の心を貫く。 何も言い返せない

「はぁ~ そこまで言われたら流石に止める言葉がないわ」
「そうだね。 無理矢理止めることが フェイトちゃんの心を、プライドを一番傷つける行為よね」

 振り返れば、パンパンと小気味良く柏手を打ち緊張した場の空気を崩す、少しばかり仏頂面の アリサちゃんがいた
 いつもの大人びた優しい微笑みを浮かべる すずかちゃんがいた
 私と フェイトちゃんとの会話を聞く側の立場に殉じていた二人が、諦めと呆れに覆われた暖かい言葉と一緒に割り込んでくる

「アリサ? すずか?」

「私の可愛い妹分で、まだまだお子ちゃまだと思ってたのに、一体何時の間にこんなにも……
 そんなにも決意が固いなら、しょうがないわね。 私は私のやり方でフォローしてあげる。 だから、フェイトの思うように、全力で挑んでみなさいよ」
「私も……かな?
 私、前々から異世界の技術にもかなり魅力を感じるし、その方面で フェイトちゃんのフォローが出来るようになれたら嬉しいな」

 墜ちた
 その瞬間、私は理解した
 二人とも フェイトちゃんの想いを前に完全に墜ちたことを
 そして 私自身も例外ではなく

「一つだけ約束して欲しい……」

 それは暗く沈んだ声、とても自分のモノだとは信じられない
 想いがあまりにもバラバラで上手く声にならない。 だけど 私は、ようやくそれだけの言葉を絞り出す
 だって…… これだけは、これだけはどうしても分かって欲しいから
 なんとしても護って欲しいから
 絶対に絶対に忘れないでいて欲しいから

「「「なのは(ちゃん)」」」

「絶対に絶対に帰ってきて……
 どんなにボロボロに傷ついても、どれだけ苦しくて辛くても、自分の命を軽く扱わない……最後の最後まで諦めないで……」

 置いていかれるのは嫌なんだ
 独り、取り残されるのは怖いんだ
 大切な人を失う辛さに 私はもう耐えられないんだ
 それは多分、私の一方通行で自分勝手な思い込み

 だけど

「……うん、分かった」

 滲みいる フェイトちゃんの小さく、でもはっきりとした明確な返答
 私の心底に、暖かい小さな灯火が宿る
 こんな自分勝手な想いを押しつける 私に微笑んでくれた、フェイトちゃんがまるで花開くように、小さく微笑んでくれた
 雪が解け、春の訪れのように 私の心に羽が生える

「私も なのはの側にいたいから…… ちゃんと なのはの『『はいストップ!!』』……???」
「二人とも…… 一体何を?」

 なんて見事なシンクロ
 突然のストップに、フェイトちゃんが目を白黒とさせて アリサちゃん、すずかちゃんを凝視する
 申し合わせたわけでもないはずなのに完全に同じタイミングで私達の会話に入り込んでくる

「フェイトは約束してくれたから次は当然……」
「なのはちゃんの番だね!」

 マホカンタ?
 リフレクト?
 クルリと振り返り、私へと向きを変えるのは二人のハンター
 臨戦状態の瞳がランランと輝き、差し込む夕日と心拍数の上昇が二人の白い頬を紅く染め上げる

(あれ? いつのまにか会話の中心人物が フェイトちゃんから 私になってるの……!?)

「わ、私の番!?」

 包囲網に絡み取られた 私に、矛先が変わったことを不思議そうに状況を見守る フェイトちゃんと……
 いじめっ子モード突入の小悪魔アリサちゃんに、「全てお見通しよ」と逃走経路を封鎖、静かに微笑む完全無欠の包囲網を敷く すずかちゃん

 さっきまでのシリアスムードは一体どこへ?
 ……こういうやり取りは嫌いじゃないけど

「私達を欺こうなんて百世紀早い!!」
「世紀なんだ…… 年じゃなくて」

 『ビシ!』っと突き付けられる指先に思わず反応し、ツッコミを入れてしまう 私
 条件反射。 つくづく慣れだなぁ……と思い知る
 でも百世紀先って…… いったいどんな未来なの?

「なのはちゃんも フェイトちゃんを見守るために管理局に入るつもりでいるんだよね?」
「なのは…… そうだったの?」

 本気で 私の考えを お見通しでいらっしゃったのは すずかちゃん
 フェイトちゃんは そのことに驚いているみたいだけど、アリサちゃんも『やっぱりね』っていう顔をしてる
 ……私の行動って そんなに分かりやすいのかな?

「そ、それは…… えと……」
「そこで口ごもる時点で既に答えは明白よね」
 はい、正解です……
 あまりに正しい指摘に冷たい汗が背中を伝って落ちる
「あ、あぅ……」

 不味い…… 不味いよ
 最初から逃げ道がない! しかも観覧車内は完全な閉鎖空間で、あと数分間はこの状態!?

「だ・か・ら なのはちゃんも フェイトちゃんと同じように 今! ここで! 私達に! 誓わなくちゃ駄目だよ?」
「拒否権はなし。 フェイトには一方的に約束させて自分は約束しないなんて認められないわ」
「……なのはの方が 私よりも無理してる」

 フェイトちゃん参戦……
 その上、どアップで勢い良く迫る フェイトちゃん
 お願いだから そんなに顔を近づけないで…… ドキドキしてまともに考えられなくなっちゃうんだよ
 その、二人以上に真面目で真剣な声色と表情に包囲網が益々堅固なモノへと強化されたことを実感し、同時に巨大過ぎる相手に絶望を味わう

「そ、そうかな……?」
「「「そうだね(よ)」」」

(そ、即答……? しかも驚異のトリプル・シンクロ?
 もう…… 駄目なの)

「当然…… 違反に対する罰則も決めておかなくちゃいけないわね」
「それ、当然なんだ…… アリサちゃんにとっては」

 フフンと胸を張って話す様子に『そんなに嬉しそうに…… アリサちゃんってもしかしてS?』
 ……と思いそうになって、即座に止める
 アリサちゃんにギロリと睨まれたからだ
 こういう時の アリサちゃんって、気察に優れる御神流を修行中の 私よりも鋭い

「違反事項は、怪我してても 私達に黙って無理や無茶をしていたとか、泣きたいくらい辛いのに 私達に何も相談しないこととか……かな?」
「すずかちゃん…… どこからかペンとメモまで取り出して、今から草案つくりなの?」

 ペンを握る すずかちゃんの右腕が舞い、私の目でさえ捉えることが困難なほど高速で文字が表記されていく
 すずか参謀を中心として、既に敗戦処理が始まっている……
 『そうだよー』って、笑顔で頷く すずかちゃんに、魔法で虚空から出てきたみたいなことを突っ込んだら終わりなんだろうなぁ……

「なのはと一緒……」
「あの フェイトちゃん、そんな微笑まないで…… 多分、この罰則って フェイトちゃんにも当てはまるんだよ?」
「なのはが守ってくれるなら、私もちゃんと守るよ?」

 燕返しの如く見事に切り替えされた……
 嬉しそうに頬を紅潮させる フェイトちゃん
 もし フェイトちゃんと同期の管理局員になったとしても、慢性的な人手不足と 私達の総ランクからして別々の部署に配属される可能性が高いはずだよね……
 私がランクを誤魔化すとか?
 いや、駄目…… 既に プレシアさんが 私と フェイトちゃんの活躍(やや誇張気味?)を管理局内に広めてて意味がない
 私がトップを、組織の乗っ取りを狙うしかないかな……

「罰則は…… 丸一日拘束?」
「そうだねぇ…… 遊園地とか映画館とか、あと 私達のお家に監禁とかでも良いんじゃないかな」

 和気藹々。 まるで日常の如く弾む会話のキャッチボール。 でも内容は身震いするほど物騒なモノ
 っていうか…… いつのまにか そこまで話が進んでいるの?

 私は戦闘中に意識を散らす愚かさを自覚させられた

「罰則……なの?」
「罰則よ!」

 即断即決。 すっぱりと断言される
 そこまで爽快に両断されてしまうと アリサちゃんの言葉全てが正しいと聞こえてしまうから不思議だ。 これも アリサちゃんの持つカリスマなのかもしれない

 正しく王者の風格だね

「しっかり刑に服して(私達に)償いをしてね…… ちゃんと食事も付くから
 あ、それとも 私の家で無期懲役? 今なら 私と一緒だったら外出許可もアリだよ?」
「ちょっ!? すずか!! それってほとんど! け、け、けけけ……けッk!?」
「け……? けん、健康器具?」
「ちぃ……がぁーーーッう!!」

 バタバタと両手を上下させ異議を申し立てる アリサちゃんだけど、なんか 私にとって かなり不利不当で一方的な裁判だよ
 アリサちゃんも赤い顔をしながらも、そんなに嬉し楽しそうに話さないで欲しい……かな
 すずかちゃんは言わずもがな、終始満面の笑顔のまま この現状さえも楽しんでいるようにしか見えない

「……ぅん?」

 手の甲に白く細い指先がスゥっと触れ、一瞬の躊躇いを経て握りしめてくる
 優しく触れるその感触がひどく心地よいもので、私の心を落ち着かせる。 その控えめな気遣いが嬉しくて、思わず その手を握り返すことで それに答えようとしてしまう

「なのはは…… 二人に大切に思われているね」
「それは フェイトちゃんも同じだよ?
 でも…… なんだか問題を起こすことを前提に話が進んでいるような気がするよ」
「なのはにとっては迷惑?」

 問題が解決したわけでなく、考えなきゃいけないこと、決めなきゃいけないことは逆に増えたのかもしれない。 だけど、フェイトちゃんとの会話に笑みが溢れてこぼれ落ちる
 繋いだ手。 握る指先に熱が篭もる
 フェイトちゃんが感じているように、私も フェイトちゃんの存在をいつも以上に身近に感じられる
 それだけじゃない。 私達の見つめる先、白熱した議論を交わし合う アリサちゃん、すずかちゃんも……

 三人の心が 私の心のすぐ側に、とても近くてあたたかかった

「ううん…… 迷惑じゃない、嬉しいよ」
「うん」

 観覧車に差し込む紅い夕日が、全てを優しく黄金色へと変えて……
 私は それがとても綺麗だと感じられた

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ロジカルなのはIF4話②ー3

 4-2 その③

『ここは…… どこだろ?』

 沸き上がる疑問を言葉に変えることなく 私は胸中で呟く。
 そこは何も見えない、そこでは何も聞こえない、自分自身の身体さえ正確に認識することが出来ない無色透明で無機質な世界。 多分 私は今、私自身の、否、もしかしたら 私を知る誰かの夢の中にいるのような気がする。 それは論理的な根拠に基づくモノじゃない。 けれど、それだけはただ漠然と感じ取れるんだ。

『あ……』

 世界の変化はあまりにも唐突に起こる。
 不思議な感覚が世界全体へと広がる。 私はそれに為す術もないまま囚われてしまう。
 スゥーっと頭の熱が奪われていくような感触。 何よりも心地よい冷たさが口内を覆い尽くし満たしながらもジワジワと広がっていく。
 トロンと癒されるような甘さが口内全体でとろけ、舌へと染み込み侵していく。

 冷たい冷たい冷たい…… 全身に蓄積された大きすぎる熱量が奪われていくのを感じる。
 甘い甘い甘い…… 糖分が満たされ脳へと活力を与えてくれる。

『使われている砂糖やクリームは最高級っていう代物じゃない…… けど、その一つ一つの作業や行程はとても丁寧でしっかりと作りこんでるね』

 冷たく甘い何かが、大地に染み込む粉雪のように浸食し続ける それを、超一流のパテェシエを母親に持つ 私の味覚が冷静に、決して低くない判断を下す。 それは 私も知るモノで、私のごく身近にあるモノ。 そう、私の家で経営する翠屋と同質のモノ。 そこには安く美味しいモノを、より多くの人達に味わって欲しいと願う料理人の意志とプライドがあった。

『かなり美味しいね…… ん?』
 再び異変が起こる。
『ちょっと…… あれ、ペースが速ッ!?』

 次第にそれは舌先に心地よくとろけていくよりも早いペースで供給され初め…… ほとんど累乗で増加していく それは、私自身の処理能力を超えて徐々に、いやむしろ爆発的に蓄積されていく。 それはまるで、粉雪舞い散る趣ある風景から局地的な豪雪へと移行したかのように思える。

『このままじゃ ま、まずッ!? 雪山遭難…… 違う、救助を…… SOSを!?』

 既に口内を隙間無く満たしつつある冷たさに脳は耐えきれず悲鳴を上げ、危険信号を発し続ける。
 世の無常か。 けれど、私の必死な訴えが天に届くこともなく、その冷たさが凍傷のように舌先の感覚を麻痺させ、私をさらに危機的状況へと追いこんでいく。

 そしてついに破綻の瞬間が訪れる

 キィィィィィィィィィィィィィン!!!!

「ふみゃぁーーーッ!?」
 ガタンと大きな音が響く。 私はいつのまにか両手で頭を抱えながら椅子から勢い良く立ち上がっていることに気付く。
 無機質なモノ全てが吹き飛び、私をおおう全ての感覚が元通りに復元されていく。 そこでようやく 私は今まで椅子に座っていたらしいことを知り、その脳に直接響くような鋭い痛みに頭を刺しぬかれ、瞬間、色が音が戻り世界は現実味を取り戻したことを実感する。

「……なのは?」
「はぁ やっと気付いたわね」
「そうだね アリサちゃん。 なのはちゃんもやっと正気に戻ったみたいだよだね」

(フェイトちゃん? アリサちゃん? すずかちゃん?)

 私の座る白いプラスチック製の椅子と対になる白い丸テーブル。 そして目の前にある金魚鉢のような大きさの器にバニラ、チョコレート、フルーツ…… 山々と盛られた巨大で豪華なデコレートのなされたパフェ。 おそらく名称はスペシャルジャンボパフェ。

(パフェはお昼の後って…… あれ? 空になったお皿が…… 私、いつの間にかお昼食べてたの? しかも食べ終えてる!?)

 急変した世界を受け入れきれずに驚愕する。
 片づけられた複数のお皿。 妙に威圧感を放つ目の前の巨大な金魚鉢。 そしてそれを挟んで座る アリサちゃんと 私の左右に陣取っている フェイトちゃん、すずかちゃんの姿。
 何故かパフェの頂上、アイス部分は既に半分以上が削り取られ、私を囲むように三人からアイスをすくったスプーンが向けられている。

 この状況でまず初めにしなくちゃいけないことは……

「あの…… 三人とも何をしているの?」
 左側から フェイトちゃん、アリサちゃん、すずかちゃんと席に着く一人づつ見回しながら当然聞くべき疑問を口にする。
「えと…… 私は なのはにアーンをしてみたくて……」
「そ、そうよね!! フェイトの言うとおり!!
 ひ、人として! お、恩はちゃんと返さなくちゃ!!」
「それに なのはちゃん、なんだか疲れてたみたいだから…… 糖分の補給も必要かなって?」

(ぅぅ…… あぅ
 私、お化け屋敷から全然意識ないよ? ここまでの記憶がほとんどすっぽ抜けてるの……)

 目に見える状況から、あの頭痛の原因がアイスにあることだけは理解出来たけど、どうして そんな状況に陥っているのかは、さっぱり分からない。

 少し言い辛そうに、すまなそうな瞳で見つめてくる フェイトちゃん
 何故かつやつや、すべすべなほっぺを でも、真っ赤に染め上げたまましどろもどろな アリサちゃん
 いつも通りの笑顔で、にこやかに優しく微笑んでいる すずかちゃん
 様々な会話が展開される中、それでもなお 私の前にスプーンが差し出されたままなのは……
 僅かたりとも揺らぐことなく 私に突きつけられたままなのは……
 それはつまり、私はこれを食べなければならないんだろうか?

「あのさ…… このパフェっていつ注文したの?」

 質問の方向性を変えてみる。 特に この目の前のパフェ。 ここは食券を買う形になっているから、誰かがお金を払ったことになる。 元々 私がおごる予定で、しかも お母さんから『しっかりエスコートしなさいね』と お小遣いを色をつけて前借りさせてくれたのに、ここにいる誰かに払わせてしまったとしたら本当に申し訳ないし…… 何より そんなことが お母さんにバレたりなんかしたら恐ろしすぎる。
 ここは絶対に 私が支払いを…… おごらなくちゃいけない!!

「これも…… それも…… あと、昼食も クロノのおごりだって」
「そうなんだ。 それで クロノ君はどこ……ッ!?
 ……何してるかな クロノ君は?」

 フェイトちゃんは そう答え、手にしたスプーンを所在なさげにふらつかせ、最終的にはアムと口に含みこみ上げる甘さに思わず幸せそうに綻ばせる。 最近、そんな風に女の子っぽい表情を見せるようになった フェイトちゃんを視界の隅に置きながら、私は クロノ君の姿を探し求め…… そして、硬直した。

「僕は…… 僕はぁ…… 僕はぁぁぁ……」

 テーブルに突っ伏したまま、酔いつぶれた四十過ぎのオッサンの如くやさぐれ、お経のように延々と恨みつらみを呟き続ける クロノ・ハラオウン執務官の黒髪が視認出来た。
 黒色が少し薄くなったかな?
 エイミィさんが苦笑しつつ慰めてはいるけど…… 彼はもう色々と振り切れちゃっていて、しばらくは戻ってこれないだろう。

「ああ、あれね。 エイミィさんが言うには、私達が来る数分くらい前に どこからか現れた猫耳メイド娘の胸に埋もれているとろこをクラスメイトの女の子数人に見られたって言ってたけど…… 実際のところ、私にもよく分からないわ」
「事実かどうかは夏休み明けのになれば分かると思うよ。 クロノ君の新しい渾名が凄く楽しみだよね」
 アリサちゃん、すずかちゃんも 私達に補足するように会話へ乗ってくる。 でも すずかちゃん、その発言はちょっとばかり負のオーラが出ているよ?
「まぁ、クロノって生真面目だけど大人っぽくて頼りがいがあるし優しいから、下級生にも人気があったのよね」
「もう風前の灯火だよね。 世界恐慌並みの暴落を魅せてくれそうだよ」
 二人とも既に過去形なの?

 クロノ君がどうしてそんな状況にまで追い込まれたのかまでは分からないけど……
 とにかく、クロノ君の学園ライフが色々な意味で終焉を迎えそうなことだけは理解出来た。
 不本意ながら小学校編入した十五歳男の子。 それでも任務を円滑に進めるためコツコツと地道に周りの同級生達(六年)の信頼を積み重ねてきた優秀な執務漢。
 その境遇がなんだか哀れすぎて、私が思わず同情してあげたくなってしまう。

(……あれ? でも、この状態の クロノ君がおごってくれたって?)

「ああ、なのはちゃん。 正確に言うと、おごってくれたのは クロノ君と エイミィさんだよ」
「『正確』…… というか『事実』を言うなら、クロノが呆然と黄昏れているのを良いことに そのお財布を笑顔で抜き取った エイミィさんがおごってくれたのよ」
 流石親友。 私の表情から その疑念を察したらしく、二人が フェイトちゃんの言葉に上手く肉付けしていく。
「そ、そうなんだ……
 アリサちゃん、補足をありがとう。 おかげで クロノ君の不幸具合がとても良く分かったよ」

(本当に…… 現実って、こんなはずじゃないことばかりだよね、クロノ君?)

 思わず深い深い溜息が漏れる

『さあ、良い子のみんなーーーッ! 準備はいいかなッ!!』
『『『『『はぁーーーーいッ!!!!!!』』』』』

 その空白となった会話の合間を縫うように、スピーカーに増幅された若い女性の声と子供達(多分)の元気な声が 私達のくつろぐ この場所まで届いてくる。
 既に それまでの話が一段落していたため、自然と 私達の聴力は その流れてくる声へと集中し、それがごく自然に次なる話題へと繋がっていく。 どうやら音源はすぐ隣からみたいだ。

「あ、隣の会場で何かのイベントが始まったみたいだね」
「ええ……と 『魔導戦隊マジョレンジャー』? これって今放送中の特撮モノよね?」
「うん、そうだよ」
 すずかちゃんの言葉を受け、アリサちゃんはすぐさま遊園地のパンフレットを開き必要な箇所、今後のイベント情報などを次々と確認していく。 さらに それを覗き込むように見ていた フェイトちゃんが話しに乗ってくる。 どうやら フェイトちゃんの興味を誘う話題だったらしい。 その紅い瞳が燃え上がるように アリサちゃんの手元にある記事を見つめている。

「フェイトは知っているの?」
「知ってる。 この番組は アルフが好きだから、私はいつも一緒に見てるんだ」

 うん、そうだよね。 休日の早朝鍛錬の後、シャワーもそこそこに半乾きの髪のままリビングまで アルフさんと一緒にダッシュしてるもんね フェイトちゃんは…… しかも、NHKの盆栽番組見ようとリビングで陣取ってた兄さんを胸に抱きかかえた子犬フォーム・アルフさんとのダブル上目使いで完全撃退してたしね。 あれって、私の家では既に最強レベルの攻撃だよ?
 結果、お母さん権限によりシャワー後、フェイトちゃんの髪の毛を乾かすのが 私の仕事として定着なんだよ。

「そうなんだ? じゃあ、なのはちゃんも フェイトちゃんと一緒に見てたりするのかな?」
「私は…… ごめん、見てないんだよ」
 フェイトちゃんの次にシャワーを浴びて、フェイトちゃんと自分の髪を乾かすから見てる暇ないから
「うん、なのははリーダー役をやっているピンク色の女性が『桃子』さんなのが見づらいんだって」
「『桃子』さん?
 ああ、なるほどね…… 流石に自分のママと同じ名前なのはちょっと引くわよね」

 たしかにそうだよ。 特に大きなお兄さん達が『桃子』さん役の人に熱狂してるのなんかは、物凄く引く。 それこそ思わず、問答無用で殴り倒しちゃいそうなくらいに……
 それにお父さんが この現状によく我慢出来るなと思ってたら…… うん、なんか物置でお母さんに『やりすぎ』だって折檻されてたみたいだし、しばらく翠屋のお菓子も食べさせて貰えなかったっけ。

「内容は…… 悪の大魔導士が世界を混沌とさせるために強奪した封印されし危険な魔法を、正義の魔女達が回収・再封印する話?
 この五人の魔女……見た目は女性だよね。 なんだか戦隊モノとしては女性比率が大きくないかな?」
「すずか、そうなの? 女性役が多いのは確かだけど、ちゃんと男性役も出てるよ」
「大きなお姉さん(主婦)とかお兄さん用かしら…… 色々なニーズに答え、視聴率を取るためとはいえ、制作サイドも大変よね」

 幸い、その努力は正しく報われているみたいだけどね。
 十歳前後の男の子と その保護者だけでなく、三十、四十の主婦達。 二十歳を超えているだろうソレ系の趣味を持った人達。 この園内で最も大きな会場をも埋め尽くすほど沢山の人影が 私達のいるこの場所からでもはっきりと確認出来る。
 私は『戦隊モノって、基本男の子のための番組だしね。 ああ、そういえば ユーノ君も この番組好きだったなぁ……』などと、漠然と考えながらみんなの話しを聞いている。

『大変! 大変! みんな大変だよ! 悪の魔導士が会場を襲ってきました!!』

 お姉さんが必死に叫ぶ。 どうやら会場を本格的に盛り上げにかかってきたみたい。
 会場がさらに熱くなる。 狂乱という言葉は正しく この状態を意味するのだろう。 その中でも、特に大きなお兄さん達の盛り上がり方が凄まじい。

「そういえば戦隊モノの悪役って変に目立つだけで無意味な行動ばっかりよね…… 白昼堂々、一般市民を襲うとか、そんな無差別テロやるよりももっと効率良い方法もあるのにね」
(アリサちゃん…… それだと番組が成り立たなくなっちゃうよ)
「アリサちゃん、それは言わない約束だよ?
 一般的なヒーロー戦隊モノの鉄則に反しちゃうじゃない。 そもそも正義の味方自体が敵を倒すだけで後始末もほとんどしていかない集団だし、現実的に深く考えても意味もないんだよ」

 だいいち、本当に世界征服するつもりだったら一から組織を立ち上げるよりも大きな勢力に取り入った上で、裏切りや謀略を駆使しつつ敵対勢力を排除しながら勢力内での地位を確保。 その上で組織を乗っ取りつつ地域住民の支持を…… 駄目だ。 とてもお子さま番組じゃなくなる。
 ともかく、この国内で一番やくざな組織っていうのは『国家』なんだよね。

「そうよね。 こういうのは フェイトみたいに素直に楽しんだモノ勝ちみたいなものだしね」

 フェイトちゃん、すずかちゃんが盛り上がる会場に意識を向けている中、考えても意味のないことを延々と考えていたことに気付き、私も アリサちゃんも同時に苦笑する。 そして、目の前のパフェとのバトルで既にくどく感じるほど甘ったるくなった口内を癒すため、アイスコーヒー(おそらくインスタント)の満たされた紙コップを手に取り含もうとして……

『良い子のみんなーーーッ!! 私と一緒に呼びましょう!!』
『せぇーーーのッ!! 『『『『『桃子ちゃぁぁぁぁん!!!』』』』』』

 ブッ!!×2
 ビチャビチャッ!!

 吹き出した……
 ヤツがいたから……
 その呼び声の中にヤツの甘えきった声を聞き取り口内に含んだ、ほぼ全てのコーヒーを真っ黒いシャワーのように噴射した。
 よく見れば アリサちゃんも同じようにコーヒーをぶちまけている。
 同じアクションを起こし見つめ合う私達。 アリサちゃんは目を丸くし、信じられないモノを見せつけられたかのように呆然としている。 もしかして、私もまた アリサちゃんと同じ表情をしているんだろうか?

「なのは…… アリサ…… 冷たい……」
 私のよく知る声。 その周りの大音響に紛れ消えてしまいそうな掠れる声に我に返る
「ぐっしょり…… フェイトちゃん、大丈夫?」
 ポケットから白いハンカチを取り出そうとする すずかちゃん。 そして、私と アリサちゃんに挟まれるように座っていたのは

「ぅぅ……」

 色白できめ細かい肌に、金色の長い髪の毛に、今日この日のためおろしたての真新しい上着に、ポタポタと雫を滴らせる フェイトちゃんがいた。 前髪が ぶちまけられたコーヒーを滴らせながら覆い隠し確認出来ない。
 フェイトちゃんの表情がどうしようもなく気になる。
 フェイトちゃんは普段冷静だけど激昂しやすい部分がある娘だけど その性格から考えて怒ってはいない……と思う。 だけど この場合、私的には泣かれるほうが辛い!!

「ご、ごめん! フェイトちゃん!!」
「ちょっとまって! すぐに拭くわ!!」

 硬直解除。 そして 私、アリサちゃんの同時行動。
 ほんの僅かな距離。 それでも 私達は全力移動で詰め フェイトちゃんに吹きかけたコーヒーを二人で拭いながらも その様子を伺う。
 良かった。 怒ってはいないし泣いてもいない……みたい?

「私は大丈夫だよ……むぅ」
 フェイトちゃんが少しだけ悲しそうに濡れた洋服を見つめる。
 その原因でとなった 私が言うのもおかしいかもしれない。 けれど、黒い布地で白い肌が透けることがないのだけは幸いだったと思う。
「フェイトちゃん、シミになる前に洗った方が良いと思うよ」
「たしかに すずかの言う通りね。 フェイト、一緒に洗面所まで行きましょう」
 すずかちゃん、アリサちゃんが フェイトちゃんの手を引き立ち上がらせようとする。
「そのお洋服……